- 『ガラスの墓標』…原題は“CANNABIS(大麻)”だが、冒頭のナレーションにもあるとおり、愛と青春の映画。ぱっと見では、かなりいびつで、ストーリィの筋すらも分断されているような乱暴な編集に見えるが、逆にそれによって、マフィアの殺し屋・セルジュと大使の娘・ジェーンの炎のごとき恋模様と、セルジュを慕うその弟分との危うい人間関係──この三角関係(こそ)が実にシャープでソリッドに浮き彫りにされている。この3人の関係の、まさに表象だけを切り取ったかのようなその編集が非常に面白い。そして、ジェーン・バーキンは本当に綺麗。
- 『アメリカン・ビューティー』…崩壊寸前の一家族と、その隣人や友人などとの人間関係の顛末を描く。特に印象に残るのはやはり、カメラで撮った画面で世界を見つめるリッキー。カメラという客観という主観を手にすることで、彼なりの道を──本当に美しきものを迷わずに見つめてゆく姿はとても素敵だ。地に足が着かなくなってしまった登場人物たちの中で、実に際立っている。
- 『ウォッチメン』…『300<スリー・ハンドレッド>』のザック・シュナイダー監督作品。スーパー・ヒーローたちを、そして人類を襲う未曾有の計画を描く。2時間40分近くの尺で、ほぼ全キャラクターの過去や身の上を語りつくし、さらにミステリィ、カタルシスまでをもぶちこみながら、その冗長さをまったく感じさせない独特のプロット構成が見事。映像も大変素晴らしい。映画のクライマックスにて描かれる<究極の正義>の如何についてなど、観たもの同士でおおいに語らえる作品だろう。