『バトルシップ』

テーブルゲームバトルシップ』を原作にとった海洋SFアクション大作。アメリカ、日本をはじめとした各国海軍による合同軍事演習がおこなわれるハワイ沖。そこに突如として宇宙から謎の物体が飛来、巨大な戦闘マシンに変形し、総攻撃を仕掛けてきた……。

昨年公開の『世界侵略:ロサンゼルス決戦』が陸軍映画なら、今度は海軍映画だぜ、というノリの侵略SFアクション。ユニバーサル映画100周年記念作品と銘打たれているだけに、金かかってンなぁっていうシーンが目白押し! ……なのだけど、どうにもテンションがあがりきらない作品であった。もちろん、エイリアンの駆動する巨大なトカゲ型ロボットのデザインもディテール含めて格好いいし、爆発や瓦礫もジャンジャン出てくるし、戦艦VS.巨大ロボットというありそうでなかった画も面白くなりそうなものだし、ボードゲームを「ああいう」形で映画に取り込むのかというアイディアも秀逸だったし、あとユニバーサル映画100周年記念としてかどうかジョーズ(?)もカメオ出演していたし、楽しかったといえば楽しかったのだけれど、少々不完全燃焼感が残る。なぜだろう、うーん……。

おおざっぱに考えて、次のことが問題なのだと思われる。


1.スケール感の脆弱さ。
エイリアンが乗り込む巨大ロボットが、ひとえにカメラワークの問題だと思うのだが、どーにも巨大に見えないのである。というのも、ロボットを映すときのアングルが平板で──カメラの高度が正面だったり真横だったり──いまいちスケール感が出ていない(もちろんCGの演算的にはドでかいんだろうけれども)。海洋上での戦闘ということで、ロボットとの比較対象物がほとんどない──たとえばゴジラだったらビルよりでかいとか──ので余計にそのように感じられた。そのくせ、戦艦はけっこうスケール感の出る撮り方をしているものだから、さらにロボットが小さく見えてしまっていたのだ。もう少しロボットを映す際に、あおりのアングルを使うなどの工夫があれば(水平線の位置の工夫)、もっとスケール感がでただろうに惜しいことである*1


2.ロングショットの少なさ。
最近の映画は、ミディアムより寄ったショットばかりでシーンが作られている傾向があるように思うけれど、本作もご多分にもれず。本作の陸軍版ともいうべき『世界侵略』よりもマシだったが(あれはひどかった)、それでもちょっと引きの画面が少ない。とくに主人公をはじめとしたメインキャラクターが出張ってくるシーンがそうで、誰がどこにいるのか、といった空間把握が──狭い艦内であってすら──非常にしづらく、臨場感に欠ける嫌いがある。


3.長過ぎ!
上映時間じつに131分。ジャンルムービーとしてはちょっと長いだろうとは思う。しかも、どう考えても無駄なシーンが多い。とくに、主人公アレックス・ホッパー(テイラー・キッチュ)のキャラクター説明のシーン──こいつ、こんなにダメな奴なんですよう──が、タイトルクレジットが表示されるまでのアーバンに10分そこら描かれるのだが、要るか? ギャグもお寒いし……*2。その日がアレックスの誕生日という象徴もいまいち活きていない。アレックスのダメっぷりを描くなら、もうちょっとほかに方法がいくらでもありそうなものなのだが。その割に、「エイリアンをやっつけてやったぜ」という余韻をあまり描くことなくバッサリ切っちゃたりなんかして、どうも話運びのバランスが悪い。監督のピーター・バーグの前作『ハンコック(ウィル・スミス主演)』を観たときも思ったが、この人キャラクター描写とか語りがあんまり上手ではないのだと思う。


とまあ、文句ばかり書いてしまったけれど、この映画でひとつ興味深いといおうか、「ギョッ!」とした場面があって、それは、序盤に描かれる香港崩壊シーン。土地は違うけれど、どう見ても9.11のほぼモロ再現であって、尺それ自体は短いものの非常に印象的なシーンだった。だいぶハリウッドのトラウマもこうして言語化できるようになったということなのだろうか。というわけで、香港崩壊シーンがオススメです。

*1:当初3Dで撮影される計画があったような形跡なので、それを考えると、ほぼ真上から捉えるようなショットや砲塔の旋回なども散見されたことから、一方でアングルの平板さは3D効果を狙ったものだったかもしれない。

*2:つうかパロディやるならユニバーサル映画の映画でやれよ