2012年度鑑賞映画作品/51-60 感想リスト

『バロン』……テリー・ギリアム監督。なにこれチョー楽しい! っていう映像マジックが満載。目に映る画面の豪華で壮大で馬鹿馬鹿しくもあるぶっ飛んだ感覚に胸が躍る。
ジェイコブス・ラダー』……友人から元ネタのひとつと聞いたけれど、なるほど『サイレントヒル』地下世界のヴィジュアルを思わせる悪夢的映像が楽しめる。大友克洋の短編「夢の蒼穹」を思い出したりなんかして。
『マッドマックス2』……勉強不足にも観てませんでした(サーセン)。カーチェイス・シーンがすごく楽しく、なにこれ超アガル! ガソリン生成所の爆発も素晴らしい。今敏の漫画に出てくる犬のイメージ・ソースって、マックスの愛犬かしらん。
ワイルドバンチ』……冒頭の強盗シーン、中盤の列車強奪シーン、ラストのスペクタクルと、演出のそれぞれに対する緩急のつけ方が素晴らしい。高められる緊張感と、暴力の発動という間のバランス感がすごい。無法者の時代の終焉を告げる美しい鎮魂歌だった。
『マシンガン・パニック/笑う警官』……非常に淡々とシーンが続くのだけれど、そのちょっとくたびれた感が、捜査に走り回る刑事たちとマッチしていて、たいへん面白かった。昔はこういう映画がテレビで見られたんだなぁ(吹替え版を見てしみじみ)。
『重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス』……フレンチ・コネクション』のスピン・オフ。評判のとおり、中盤の見せ場であるカーチェイス──とくにその後半部──が素晴らしい。裏社会の闇が跋扈する日常世界の演出もなんとも不穏で見応えがあったし(洗車場をあれだけ不穏に撮るのは凄い)、ラストの落とし前のつけ方も、単なる暴力による解決よりもさらにグッとくる重さでなかなか!
『新少林寺/SHAOLIN』……ベニー・チャン監督は相変わらずアクション演出が巧い(今回ドラマの繋ぎがちと乱暴だが)。クライマックスの攻防はまさに阿鼻叫喚の画面が展開されるが、予想のはるか上を行く出来映えで素晴らしい。題材が題材といえ、昨今ここまで自己犠牲/利他的精神を賛美する映画も珍しい。
『アナザープラネット』……youtubeで米本国向のティーザーを目にしてからというもの、ずっと楽しみにしていた。原題である“もうひとつの地球(Another Earth)”が空の彼方に見えている世界、というイメージを構築せしめた点で、まずこの映画は勝ちだし、それを贖罪をテーマとしたストーリーときちんと関係しつつ、かつあくまで外縁に留めておくというバランス感覚が素晴らしい(かつ最後まできちんとSFという点も)。かつて犯してしまった大きな罪の意識に揺らぐ主人公ローダの心情を吐露するかのような手持ちカメラによる撮影と、抑え目の色彩設計も功を奏している。寡聞な僕の鑑賞経験のなかでもたいへん上質なSF映画となった。オススメ。ヒロインを演じたブリット・マーリングは脚本と製作も兼任するという多彩な女優さんのようだ。監督マイク・ケイヒルも含めて、ふたりのほかの作品も輸入されるといいなァ。
明日に向って撃て!』……不思議な塩梅の西部劇だった。西部劇の終焉を告げる“影”としての追跡者の描写が、ニューシネマらしくて恐ろしい。そうかと思えば現れるつかの間の笑いや、アクションの演出等すばらしい(列車のコンテナ爆破はすごかった)。バカラックによるスコアも、意外にも西部劇に合うのね。
『新・明日に向って撃て!』……明日に向って撃て!』の前日譚。ブッチとサンダンスの出会いと冒険を描く。監督リチャード・レスター独特の“ハズシ”が効いた演出が素晴らしく、単なる2番煎じに留まらない傑作だった。原典が西部終焉の哀愁なら、こちらはそこに至る最後の輝きとして、明るく楽しい思い出として描かれているが、時折挟み込まれるペーソスもあり、非常に味わい深い。
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