2012年鑑賞映画作品/81-90 感想リスト

X-MEN: ファースト・ジェネレーション』……X-MEN誕生秘話を描く。クライマックスに差し掛かるまではたいへん楽しんで観れた。モーリス・ビンダーやソウル・バスを思わせるエンド・タイトル・デザインが示す時代──すなわちエピローグに当たる部分も今後製作されるであろう続編(あと、既存の正伝)への布石回収もあったのうだろうが流石にだらだら長過ぎて残念。もうちょっと尺が短ければ、もっと観れる映画になったと思われる。

『ウィークエンド』……ゴダール監督。停滞するような長回しと対を成すような色彩設計が鮮烈。そして、極度に肥大化して描かれる人間のエゴや、忘れたころに突然やってくるショック演出(鮮血!鮮血!)も強烈だった。ある種サイケ。

『女は女である』……ゴダール監督。音楽を効果的に用いてみたり、衣装が一瞬で変わってみたりといった部分も含めて編集が非常に面白い。というか、フツーに面白い映画だったので逆に驚いた。

ダークナイト ライジング』●……>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20120801/1343841635

真夜中のカーボーイ』……大都会ニューヨークにてあぶれてしまった2人の青年の孤独と友情を描く。主人公たちのトラウマ記憶や夢、妄想などを具現したシーンの編集が、いま観てもぜんぜんカッコいい。細かな演出や笑いも効いていて、胸に迫る青春映画だった。

『リング』……ようやっと鑑賞。カメラに映り込んでしまったような幽霊演出や、その禁を破ったかのように画面から這い出してくる貞子はやっぱり怖い! 呪いのビデオに映る断片的な映像の不気味さは、思わず見入ってしまう禍々しさをたたえている。その中に映る蠢く文字やクライマックスに舞台となる古井戸など、一方で抑圧されたトラウマ記憶をめぐる物語としてもきちんとした強度を保っている。しかし、それすらも逸脱して這い出してくる貞子の怖ろしさはやはり素晴らしい。

『ランゴ』……ジョニー・デップ主演の3Dアニメーション作品。ひょんなことから水不足にあえぐ町にたどり着いたペットのカメレオンは、町の保安官に祭り上げられ、水を簒奪する陰謀に立ち向かう羽目になるという、西部劇風冒険活劇。もういろんな意味で凄まじい映画だった。ILMが担当したCGが持つ情報量の濃さや画面レイアウトや色彩(爬虫類の皮膚表現などなど! 映像で驚いたのは久しぶり)が、アクションシーンが、テンポの良い物語の語り口とコメディが、ツボを射た音楽のそれっぽさが、とにかく美しく凄まじくかつての西部劇やマカロニウエスタンへの愛に満ち満ちている。中盤には、まさかのあの人(元祖!)も登場で沸かせる。日本語吹き替え版の完成度も素晴らしい。セルジオ・レオーネ好きはとくに必見。

『エアポート'99』……500円DVD。たぶんTVM。キャストは好演(スターウォーズが好きな娘に悪い娘はいないのだヒデキ)、低予算なりの工夫も良い。ただ、物語の根幹にあるはずの「娘13歳(ヒロイン)と父VIPとの不和」「非常用自動操縦が解除できない」という関門の解決がいくらなんでも雑過ぎだよ。

『らせん』……こういう終末SF的で静かなカタルシスや、主人公の悲しい自己実現が叶うというラストはむしろ好みかものしれない。ただ、映画版『リング』の正統続編という作品の位置を考えると、重要なキィである高山竜司のキャラクタ設定に乖離(原作寄りの設定)がみられるのが惜しいところ。

『女優霊』……中田秀夫監督・高橋洋脚本。映ってしまった感覚の演出、幽霊のキャスティングの的確さ──我々と近いんだけれど、やはりどこか違う感じのある──が恐ろしい。主人公を演じる橘ユーレイのパニック演技も良い。主人公と同じく、幼いころ確かに観た覚えがあるのに、その後探しても判らない/見つからない映画というのが実際ある人間としては恐怖も倍増というもの。それにしても、淀長大先生の解説付きで観たと思うんだけど、いったいあの映画はなんだったんだろうなあ。

90