2012年鑑賞映画作品/91-100 感想リスト

『三銃士』……1948年。脚本は詰め込みすぎた感が否めないが、スピード感あふれる移動撮影(馬上アクション馬チェイス)、ダルタニアンを演じたジーン・ケリーの縦横無尽に跳びまわるアクロバティックなアクションシーンの数々は見物!

『リング2』……前作の主人公(元)夫婦の息子・陽一は結局どうなったのか、という点に焦点を当てた映画独自の続編。本作の主人公・高野舞が陽一を連れて大島に上陸してから後に展開される超常現象的映像──とくに、呪いのビデオの一場面が眼前に展開されるくだりや、貞子の岩登り──は、趣向が凝らされていてハラハラさせられた。また、呪いを生み出すその根源の要素を恐怖エネルギーだとした解釈も面白い。

『リング0 バースデイ』……『リング』前日譚。貞子がいかに怨霊となってしまったのかを描く。ホラー色は3部作中もっとも薄いが、望まない異能を授かってしまった少女の青春とその崩壊を叙情豊かに描き出し、かつ前2作で仄めかされていた海の「ぼうこん」をきちんと活かすあたり、続編として非常に気が効いている。仲間由紀恵の好演も光る。観ていて、女の少女への嫉妬が異能へのスイッチとなる点といった展開などは『キャリー』を髣髴とさせ、そこに諸星大二郎の伝奇的雰囲気を持ち込んだような印象を受けたが、こちらのほうがさらに純であり、なかなか感動すら覚えるのであった。余談だが、クライマックスに貞子が怨霊と化して、ふたりの女性キャラクターを小屋のなかに追い詰めてゆく際に聞かれた劇伴──とくに金管楽器の「ブーゥワァーン」という印象的なメロディのくだり──を一時の日本映画やアニメ、ゲームの劇判でよく耳にしたことがあるのと同一だったが、これのオリジナルっていったい何なのだろうことが、またさらに気になった。あと、アバンタイトルのくだりはなかったほうがスッキリしたかも。

ザ・リング』……ハリウッド・リメイク版。全編に薄暗いフィルターがかけられた撮影は、なるほどハリウッドテイストだし、少々やり過ぎなんじゃないかとおもうほどではあったけれど、舞台となるコテージや農場の不気味さはなかなかのもの。監督が『パイレーツ・オブ・カリビアン』のゴア・ヴァービンスキーだけあって、貞子もといサマラの造型は非常に生々しく水ぶくれたクリーチャーとして描かれていた。不気味さとか恐ろしさでいえば、オリジナル版『リング』に軍配が上がるが、そこはそれとして、ハリウッド版はより「家族vs.家族」の対立の構図がより明確化されているのが興味深い。すなわちヒロインらの(息子が母を名前で呼ぶような)「開かれた家族」と、サマラらの(保守的で牧歌的にみえる)「閉じた家族」である。重要なキィとして画面に映る灯台の明かりは、この両者の性格の表裏を明るみに曝してしまうのだ。この点を考えると、ラストの先に待ち受ける展開はおそらく、オリジナル版とはまったく異なったものになるのではないかと考えうるのであった。

ザ・リング2』……ハリウッド・リメイク版第2作。中田秀夫監督。日本では到底不可能な超常現象の映像化を試しているなあという感じで、とくに中盤の風呂場における水のエフェクトはたいへん格好良かった。1作目ではヤコブの梯子が、全編をとおしてイメージされたが、今回は洗礼のイメージが根底におかれている。鹿のくだりで1箇所合成ミスがみられた。

『カウボーイ&エイリアン(未体験ロング・ヴァージョン)』……人数を出し過ぎたせいで、きちんと演出がフォローできていない。それもあいまって、話運びのテンポとか順番とかがかなりイビツ。いろいろ半端な出来。

冷たい熱帯魚』……園子温監督。どうしても苦手な作家が何人かいて、園監督はそのひとり。過去作を観たときにも思ったけれど、人をここまで不快にさせる映画もそうない。もちろんそれはそれで才能だけれど、僕が苦手なのは、映画の内容如何ではなく、それよりも演出や撮影の粗雑さばかりが目立つこと。そこにどうしてもヤダ味を感じてしまうのである。趣向を凝らしているのだろうけれど、どうも中途半端に思えてならない。

『トータルリコール』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20120824/1345806326

ローズマリーの赤ちゃん』……ポランスキー監督。『反撥』(カトリーヌ・ドヌーヴ主演)でも見せた幻覚/悪夢描写が本作でも健在で、非常にかっこいい。自身の妊娠と、身ごもった赤ん坊を狙う悪魔教を疑うヒロインを演じる痩せっぽちなミア・ファローの存在感が、我々の判断を始終保留してくれるもので、観ていて虚実がクラクラしてくる。

『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』……マイケル・マン監督。実際に器具を使って金庫をこじ開けながらの撮影だったという金庫破りシーンのそれぞれが見応えあり。ただ、ラストは少々投げっぱなしな感は否めない(ガン・アクションは素晴らしい)。

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