『バイオハザードV リトリビューション』感想

洋上のアルカディア号甲板にいるアリス達に対し、かつて行動を共にしたはずのジルが、アンブレラ社特殊部隊を率いて襲撃。壮絶な銃撃戦の末、アリスは海へ転落し意識を失ってしまう。彼女が意識を取り戻すと、そこは謎の実験施設の独房だった。アリスは逃走の末、女性工作員エイダ・ウォンに出会う……


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ポール・W・S・アンダーソン監督。ミラ・ジョヴォヴィッチを主人公アリスに据えた、カプコンの人気ホラーゲームの実写映画シリーズ第5作。第1作から既に10年が経ち、そのときからの付き合いとなれば、はっきり言ってお布施のつもりで観に行った。回を重ねるごとに、どんどんトチ狂ってくるシリーズだが、その期待を裏切らず、ますます狂ってきており大いに楽しませてくれた。

オープニングからして、前作のラストから直接つながる船上でのアクションシーンをまるまるスローで逆回転するという、予想だにしない展開にいろんな意味で度肝を抜かれたと思ったら、それをもう1回ふつうに再生するという徹底したブッ飛び具合に脱帽。毎度、手を変え品を変えて登場する前作までのあらすじ「私の名前はアリス(My name is Alice....)」もしっかり健在で、必要もないのに復習はバッチリ!


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前作『IV』を観たときには、これから増えるであろう3D映画に先んじて、考えうるアクションをとにかくやっておこうという実験映画的スタンスが画面から滲んでいたが、今回は「まだまだそんなもんじゃねえぞ」とばかりに様々なアクションを連発。カーチェイスありジュラシック・パークありボーン・アイデンティティーありマッハ!!!!!!!ありターミネーターもありのおまけにロード・オブ・ザ・リングもありので息つく暇もないほどだが、だいたいにおいてきちんとセットを組んだりスタントをしたりと、きちんと実写映画として撮ってくれるところが、アンダーソン監督の偉いトコロ。お馴染みのモンスターたちも登場。映画には久々の登場となるリッカーもパワーアップし、『IV』にて腰の入ってなさがキュートだった処刑マジニも今度は2体も登場し、観客を沸かせてくれる。

なおかつ今作では、前述のエイダ・ウォンをはじめとしたゲームでお馴染みだったキャラクターが新たに登場したり、死んだはずの「あいつら」がまさかの再登場を次々に果たすという驚愕のシナリオが(一応)用意されている。なかでも第1作で特殊部隊員レインに扮したミシェル・ロドリゲスの再登場が熱い! 彼女は今作のクライマックスにおいても人一倍アクションをみさせてくれ、その堂に入った存在感はさすがで、主演のミラも喰ってしまいそうであった。

そういったお馴染みのメンバーがババーンと盛り上がる同じような音楽とともに画面に映ってひと暴れすれば、思わず「よっ! 待ってました!」てなもんで、もはや歌舞伎の世界である。


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とはいえ、今回カメラ・ワークが非常に単調というか平坦なのが気になった。というのも、どういうわけだか、やたらと左右対称のレイアウトが多用されており(体感としては8割くらい)シーンやショットによっては、しごく安っぽく見えてしまったのが残念だった。3D効果を狙っての演出なのか、それともアンダーソン監督なりのキューブリック・オマージュなのかは想像するしかないが、ポールあんたもっとデキル子でしょう、とはひと言申したくなった。

けどね、幸か不幸か、このシリーズに10年付き合い続けてきてしまった僕にとっては思った以上に楽しかったので、いいんじゃないですかね、ゲラゲラ笑えたし(うしろにいたカップル、うるさかったらサーセン)。当人もそのつもりで作ってるんでしょうから。こういうテンションで、肩の力を抜いてよろしくひとつ。