2012年鑑賞映画作品/111-120 感想リスト

『巨大蟻の帝国』……バート・I・ゴードン監督。タイトルどおりの内容の70年代モンスター映画。プロット構成が甘かったり、序盤のテンポがあまりにも悪かったりするが、蟻主観を示す複眼表現とか、引きの画でぎょっとさせるショットとか、1時間過ぎたあたりからの意外な展開(これはウェルズの原作の良さかな)など、おおらかな気持ちで観ればけっこう楽しめる。ポスターはドゥルー・ストゥルーザン御大!

オーメン』……リチャード・ドナー監督。ドリフターズのネタをはじめて見てから幾星霜、ようやっと本家を鑑賞。同時期の『エクソシスト』と比べると、実にオカルト映画らしいオカルト映画。獣の数字666にまつわる様々な怪異現象の様々なピースが次々と符合してゆくさまは、わかっちゃいても楽しいものだ。ほとんどの野外シーンはロケのように見えるが、一部、とくに中盤に出てくる墓地のセットの雰囲気が非常によかった。そこから見える遠景を強制遠近法によって表現しているのだが、やはり若干のズレや歪みが見え、それがある種の“異空間”ぽさに繋がって見えるからだ。ジェリー・ゴールドスミスによる楽曲も素晴らしい。

オーメン2/ダミアン』……ドン・テイラー監督。タイトルになっている割に、ダミアンが自らの悪魔性に気付きに関してはけっこうすんなり「あ、そうすか」程度で納得しちゃってるのが可笑しいけれど、ショック・シーンの演出がかなりハッとさせられるものが多かった(エレベーターのシーンとか)し、ジェリー・ゴールドスミスによる音楽もシンセがいい感じにトチ狂った様子で楽しんで観た。

オーメン/最後の闘争』……グレアム・ベイカー監督。サム・ニール若い! 今回は「幼な子」殺しの再演が大きな核となっている。その殺戮シーンを直接画面に出すわけもいかないため、それをことごとく外縁の「あれが見えてこれがそうなるから」という段取りによって表現しているのだが、そのさりげない小道具の見せ方がすごい巧い(冒頭にくるショック・シーンからして、今作はちゃんと段取り踏んで人を殺しますよ、という宣言にほかならない)。なんだか、みんなこの映画の評価が散々だけど、僕はぜんぜん嫌いじゃないですよ(そういうテンションで観るようにね)。

『ジャッカー』……エリック・レッド監督。冷徹な殺し屋2人組に家族を惨殺され、自らも誘拐された少年。彼は、3人で移動する夜の車中で、生き残りを賭けて言葉巧みに殺し屋2人を不和に追い込んでゆく。映画のほとんどは宵闇の中を走る車中か、その付近だが、それぞれのキャラクターがとても活き活きしていてスリリングな展開に拍車をかける。殺し屋のひとりを演じたロイ・シャイダーの感情の通っていない表情がたいへん恐ろしいと同時に、映画が進むに従って、その表情から感じられるニュアンスがどんどん変わってくるという脚本や演出の妙、そしてシャイダーの絶妙な演技は必見。

『グランド・ホテル』……エドマンド・グールディング監督。群像劇のことをグランド・ホテル形式と呼ぶけれど、その元祖。淀長大先生の解説にある主演女優ふたりの不和を知って観ると、その外側の難題を見事に解決しかつ面白く仕立て上げたプロットが素晴らしい。ホテルという小世界で出会い、またはすれ違ってゆく人々の流れを、電話の交換台に見立てて俯瞰させるシーンも良かった(なおかつこれがキチンとお話上のギミックとして機能している)。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』……スティーヴン・ダルドリー監督。11歳の少年オスカーが、9.11アメリカ同時多発テロ事件の犠牲となった父が遺した鍵の秘密を探る長い旅路を描く。ものすごく良くも、ありえないほど悪くもない、とはいえ及第点は優に越える普通にいい映画だった。情報を的確にかつテンポ良く、かつ映画全体が放つどこか悲しげ(ブルー)なニュアンスを削ぐことなく伝える語りの演出が見事。とくにトラウマ記憶を負ったオスカーが、とめどなく語り始める場面の編集や見せ方が、音響演出とあいまって素晴らしい。また、不幸にも「最悪の日」にツインタワービルにいたために犠牲となったオスカーの父の、最期の時を文字通り告げる一連の見せ方もよかったし、オスカーにとっての世界が冒頭と終盤とでは確かに変わったことを示す微細な演出など、細かな部分まで目が行き届いている。オスカーを演じたトーマス・ホーンくんの演技もさることながら、彼の祖母の家に間借りしている口のきけない老人を演じたマックス・フォン・シドーの無言の演技は必見だ(さすが『エクソシスト』において当時44歳でありながら老齢のメリン神父を演じ切っただけのことはある)。ただ、本編に付されるエピローグ部分の尺がちょっと長過ぎて、そのため全体のバランスが悪くなっている点は否めない。とくにオスカーと母との和解が描かれるシーンが物凄く長い上に説明的に過ぎるので(映画中盤で、この問題は半分解決しているし)、そこがもう少しタイトにまとまっていたら、より高い完成度になっていたのではないかな、と感じた。

探偵はBARにいる』……橋本一監督。東直己の小説「ススキノ探偵シリーズ」を原作としたハードボイルドもの。探偵=〈俺〉を演じた大泉洋ら役者人の演技やアクションは良かったが、それだけだったのが残念。その大泉洋のモノローグが一番の蛇足というか、脚本をそのまま説明してるだけじゃん! 口で言っちゃ駄目だよそーいうの(後半になるにつれ使いどころなくなって困ってるのが如実に判るし)。90度横に画面を傾けてみたり、スローにしてみたりといった、ここ凝ってみましたーみたいなカメラワーク演出もことごとくスカッてるし、なんかそれっぽいことあったらとりあえず音楽鳴らすってのもうやめませんか? あと、中盤とあるギャグ(にしたかったらしい)シーンが出てくるけど、観客に探偵の職業倫理疑わせてどーするんだよ! あの禿のオッサン、全然無関係だから! おかげで後半に出てくる探偵の台詞に、一切の説得力なくなっちゃってますから! 残念。

山下達郎シアター・ライヴ「PERFORMANCE 1984-2012」』……滑り込みで映画館へ。畳み掛けるように繋がれる名パフォーマンスを大音量で浴びる、実に濃密な90分だった。実際のライヴ会場で聴いた感覚に実に近い音響設計によって「場」の臨場感を再び味わえ、一方で座席からはきちんとは見えなかった様々なモーションが垣間見えてたいへん面白かった。ステージ上に鎮座ましましているゴジラも視認できて眼福眼福。

バイオハザードV リトリビューション』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20121017/1350477004
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