2012年鑑賞映画作品/151- 感想リスト

『007 スカイフォール』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20121220/1355977351

大魔神』……安部公義監督。時代劇×怪獣映画というガメラと並ぶ大映特撮映画。一部等身大のモデルを用いながら撮影されたクライマックスのスペクタクル・シーンは圧巻で、瓦の一枚一枚まで作りこまれているような巨大なミニチュア・セットが崩壊してゆく様は実に美しい。また、瞬きなしで大魔神を演じきった橋本力の眼力たるや凄まじい形相で迫力満点だ。本編の時代劇部分もきちんと作られており、安心して観られる。

大魔神怒る』……三隅研次監督。本作の最大の見所は、水の神として登場する大魔神の出現/出陣シーン。大魔神の力によって大地が、そして湖の水面が割れ、そこに形作られた道を大魔神が敵地目指してのし歩くというこの場面では、ハリウッド大作『十戒』の出エジプトもかくやの見事な画面が展開される。3作通じていえることだが、このシリーズは合成が実に丁寧で素晴らしい。ただ、スペクタクル・シーンが前作とほとんど同じになってしまったのは残念なところ。

大魔神逆襲』……森一生監督。大映特撮らしく(?)少年の冒険譚を軸に描く3作目。制作のノウハウも溜まってきたとみえて、今作のスペクタクル・シーンは前2作を凌ぐ見事な出来栄えだった。クライマックス、山の荒神として登場する大魔神が、猛吹雪のなかをのし歩き、非道の将軍が建てた山城を攻め落とてゆく様はメチャクチャ格好良い! この一連のシーンは、これまで以上にミニチュア・セット、合成・実物大大魔神を巧みに使い分けながら編集されており、特撮パートと本編パートのシンクロぶりはもう完璧。1・2作目の本編・特撮すべて、そして3作目の特撮場面の撮影を担当した森田富士郎による撮影は、シリーズをとおして素晴らしかった。

八つ墓村』……野村芳太郎監督。横溝正史原作の推理小説を、キャッチ・コピー「たたりじゃ!」が示すとおり、オカルト要素をふんだんにまぶして映画化したもの。後半部にある展開(鍾乳洞巡りのくだり)がちょっと愚鈍で失速気味だったのが残念だが、オカルト要素を強めたからこそできたオープニングとエンディングの映像的円環構造は、観ていてやっぱり気持ちがよいもの。地元民としては、懐かしの岡山駅旧駅舎が冒頭おがめて懐かしかった。

東京湾炎上』……石田勝心監督。コンビナート爆発シーンもさすが東宝特撮といったぐあいで迫力満点だし、主人公演じた藤岡弘のアクションも決まっている。足りない女ッ気を補うためだけに挿入されたとしか思えない、主人公が恋人を回想するシーンさえなければ、それなりにタイトで面白かった。

ドグラ・マグラ』……松本俊夫監督。夢野久作の同名小説の映画化。虚構が虚構にさらに呑み込まれていく様をまざまざと見せ付ける編集が面白い(アクションだけ繋がって、切り替えしではロケーションそれ自体違うとか)。原作をだいぶ再構築したのだろうと予想されるけれど、それでもなお観ている間の寄る辺なさの感覚は、恐ろしいと同時に気持ちがいい。

『修羅』……松本俊夫監督。ATG的だなと思うカメラワークや編集も去ることながら、主人公の次の行動の妄想をそのまま繋いでハタと元に時間を戻すという編集が多用してあったのが興味深い。また、モノクロのグッと闇に沈んだ暗い画面が印象的で、それが物語内容と同時に主人公の陥る修羅性を如実に現している。オープニングの1ショットだけカラーなのが、また憎い演出だ。

十六歳の戦争』……松本俊夫監督。「16歳」をキーに、死が非日常である現在の青春と、死が日常である戦時下の青春が交錯し重ねることで、何かを描き出そうとする。語りえない記憶の意識化がテーマのひとつのように見受けられ、とするならば、この映画全体が抑圧された無意識の表出であるところの夢がそうであるように接続詞がそんなにないことは、観客に分析・解釈を求めているのかもしれない。劇中、高校の授業で語られる「能」の構造を思えば、主人公の訪れる埴科家の面々は、ある意味で幽霊のようにも見える。揺らぐ陽炎が印象的だった。

ブラック・サンデー』……ジョン・フランケンハイマー監督。イスラエル問題に端を発するテロとの戦いを描く、アクションサスペンス。クライマックスで描かれる飛行船を使ったテロとの攻防シーンは凄まじい迫力で、それを支える撮影/カメラワーク──なかでも1ショットなかで、その状況や位置関係を捉えるといったロングショットの数々──がまた凄かった。一方で、事件の真相部分に関しては非常に複雑な感情が交錯しており、さまざまな政治的状況を考えさせられるものがあった。

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ザ・ドライバー』……ウォルター・ヒル監督。犯罪者を逃がすプロの運転役(ドライバー)と、それを追う刑事を描く、ハードボイルドアクション。現代劇でありながら、キャラクター個別の名前がなく、服も一張羅という、非常に抽象化された世界観が印象的。タイトルのとおり、売りであるカー・アクションも素晴らしかった。ただ、オチがよく解らなかったなぁ。

アポロ18』……ゴンサーロ・ロペス=ガイェゴ監督。『カプリコン1』ミーツ『ブレアウィッチ〜』型モキュメンタリー・ホラー。実は送りだされていたアポロ18号の乗組員たちが月面で出会う恐怖を描く。期待どおりの出来ながら、見せ場の見せ方やエフェクトのそれぞれは、長回しの中でハッとさせられるもので、けっこう面白い。ただ、ラストの「あの」展開は、モキュメンタリーとして明らかに矛盾してしまっており、そこが残念だった。

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以上。

それでは皆様よいお年を。