『ライジング・ドラゴン』感想

ジャッキー・チェン監督・主演。『サンダーアーム/龍兄虎弟』(1986)、『プロジェクト・イーグル』(1991)に続く、「アジアの鷹」シリーズ第3作。19世紀、清朝に侵攻したイギリス軍やフランス軍によって略奪された国宝の数々。トレジャー・ハンターの“JC”は、世界各地に散った清朝国宝の内の「十二生肖」と呼ばれるブロンズ像の探索を依頼される。しかしこの財宝には中国側、欧州側それぞれの思惑、そして大手企業の陰謀が交錯していた……。


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ジャッキー・チェン最後のアクション超大作──と謳われた、まさに千秋楽作品をようやっと鑑賞。最初に名前を覚えた俳優がジャッキーだったし、幼い頃はじめて民放の洋画劇場を寝ずに最後まで観たのもジャッキー映画だった。僕にアクション映画の面白さを知らしめたのは、誰よりも先んじてジャッキーだったのだ。僕の人生を狂わせた恩人のひとりだ。だから、ほんとはもっと早くに劇場に駆けつけたかった。しかし、僕の暮らす地域では1ヶ月あまり遅れての公開となったのだ。やっと! ああ、地方在住の哀しみよ!



さて、本作をひと言でいえば、アクションを飛ばしまくりの2時間、とでもいおうか。そう書いたところで、いつものジャッキー映画じゃないかと思われそうだが──いや、そのとおりなのだけど──ここのところジャッキー映画といえば、アクション控えめの作品や助演作品が多かったため、久々にジャッキー映画らしいジャッキー映画を観たなァ、という感慨もひとしおというわけだ。予告編で度々フィーチャーされているローラーブレード・スーツを駆使したチェイス・シーンから洋館での潜入〜脱出サスペンス、クライマックスでのカンフー・バトル……と、これでもかこれでもかと畳み掛けられるアクションの数々に、観てるこちらも「も・も・もう勘弁!」といいたくなるくらいにサービス満点だ。

今回は、VFXも効果的に用いられており、特にクライマックスのとあるアクション・シーンで大健闘。こう書くと「エーッ、特撮かよォ」としらけるかもしれないが、エンドロールのお約束であるNGシーン集をみると、けっこう手の込んだ撮影してまでちゃんと生でアクションしており、むしろ「VFXなんだからもっと楽に撮れたろうに!」と思ってしまうはずだ。しかし、出来る限り生身のアクションを撮ろうというジャッキーの心意気がここでうかがい知れる。



上映時間124分にこれでもかと詰め込まれた見せ場のそれぞれはたいへん見応えあり、それだけでもう満腹といえば満腹なのだが、ただちょっと苦言を呈するならば、このジャッキー特有のサービス精神と、最後なのだからやりたいことを全部詰め込んでしまえという心意気、そしてかつての中国の被侵略問題という政治的にデリケートな素材を脚本の題材に選んだためか、ドラマ部分の出来が粗くなってしまったのは否めない。パンフレットに掲載されたスナップをみると、映画本編にはいっさいなかった場面を写したものもあったので、おそらく編集段階で大きく削ったことが予想される。物語の内容から推測して過不足なく繋げたら3時間は下らないだろう。正直、途中から何の話だったか若干ブレてしまっており、追いづらいのは確かだ。

往々にしてジャッキーが劇中に政治的発言をする作品はドラマ部分が粗削りになる傾向があるので、まあジャッキー映画らしいといえばジャッキー映画らしい。とはいえ、『酔拳』の日本公開から34年間、われわれをその卓越したアクションのセンスと演出力で楽しませてくれたジャッキー最後のアクション超大作なれば、これはスクリーンでその勇姿を確認しなくてはなるまい。まだ上映されているならば今のうちに、劇場へ急がれたし!


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これは映画本編とはなんら関係ないのだけど、ただね、これだけは書かせて欲しい。というのも、本作のパンフレットの内容があまりにも貧相だからだ。もっといろいろあるでしょう、内容の盛り込みようが! 冊子の半分以上のページが2013年度のカレンダーってナメてんのかバカ野郎。100歩譲って、カレンダーを載せるのなら、壁に掛けられるように穴を開けて出版しとけよ。