2013年鑑賞映画作品/111-120 感想リスト

『マン・オブ・スティール』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20130914/1379146223

『SHORT PEACE』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20130915/1379213831

許されざる者』(2013年版)……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20130916/1379349118

ジャッジ・ドレッド』……ピート・トラヴィス監督。かつてスタローン主演でも映画化(1995)された、イギリスの同名コミックの再実写映画化。麻薬密造ギャングが支配する超高層マンションを舞台にドレッドと新人カサンドラが敵の攻撃のなか組織の親玉“ママ”のいる最上階を目指すという、もともとの『死亡遊戯』的といおうか、最近だと『ザ・レイド』的なSFアクション。そのシンプルなプロットのぶん、リアルな人体破壊描写満載のアクション・シーンや荒廃したディストピアSFとしての情景を思う存分楽しめる。映像面では特に、麻薬“スローモー”使用時の映像が斬新。超高速度カメラで撮影された映像に、水面に張った油膜に光が反射するような独特の色味が付加されていて幻想的ですらあるし、何より「キメるとこんな感じかもなァ」と思わせてくれる実在感が素晴らしい。レナ・ベティ演じる“ママ”の徹底した悪役っぷりは、その最期も含めて非常にオイシイ役どころだ。たいへん楽しんで観られた。

レッド・ライト』……ロドリゴ・コルテス監督。大学で物理学を教える立場から、超能力者のタネを暴いていたがマーガレットと助手トムは、かつて一世を風靡した名うての超能力者サイモンとの対決に挑むという一種のスリラー。同時に、マーガレットすらも疑問に思う、なぜトムが“似非”超能力者たちを暴く調査に固執するのかを探るミステリーにもなっている。タイトルの“レッド・ライト”とは違和感を意味するが、劇中に何度か見受けられる違和感が瓦解するラストの展開は、なるほどそういう切り口もあるか、と驚かされた。ただ、全部が全部きちんと瓦解するわけでもないので、若干の消化不良感は残るのが惜しいところだ。

『手錠のまゝの脱獄』……スタンリ・クレイマー監督。黒人差別が残る'50年代アメリカで、くしくも鎖で繋がれた白人と黒人の囚人が脱獄・逃亡する姿を描く。見つかるか/見つからないか、逃げるか/捕まるかのサスペンス部分の面白さはもちろんのこと、人種による偏見・差別が滲むどころか丸出しのやりとりの苦々しさには心が痛んだ。特に後半30分にある一連のシークェンスでは、人間の非常にドス黒い側面を見せ付けられた気がして胸糞が悪くなった。その分、ラストで描かれる主人公ふたりの不合理にも見える決断が非常に感動的だ。原題"The Defiant Ones(いがみ合うふたり)"から変更された邦題が巧く活きてくる。必見。

アルフィー』……ルイス・ギルバート監督。プレイボーイでありアルフィーが次々と女を渡り歩いた果てに訪れる末路を描く。アルフィー自身がこちら(観客)に向かって話しかけ、彼の人生観などを語ったりする作劇が新鮮。オープニングとエンディングで印象的に登場する犬の使われ方も見事だ。とにかくこのアルフィーってのがクソ野郎で、いくらでも生き方を変えるチャンスは劇中に何度も訪れるのに正そうとしない姿に怒り心頭しつつも、途中から非常に哀れに見えてくる。男女の関係に限らず、人間にはそういう側面は必ずあるものね。

『肉弾』……岡本喜八監督。人間魚雷として特攻が決まった「あいつ」が出撃前日の1日だけ与えられた自由時間をいかに過ごしたかを描く。ときにコミカルに、ときに幻想的な筆致で描かれる「あいつ」が経験する戦争は、画面内の状況がシュールになるほどに、その狂気じみた馬鹿馬鹿しさが際立ってくる。「障子に映すだけでもいい」という岡本監督の思いによって非常な低予算で撮られた作品だというが、画面の豊かさはいささかも磨り減っておらず、見事というほかない。

ローズ・イン・タイドランド』……テリー・ギリアム監督。ドラッグ中毒の果てに両親に他界された少女ローズは、空腹と孤独に耐えながら空想を膨らませていたが、そこに不思議な隣人が現れ──という『不思議の国のアリス』を雛形にとったファンタジー映画(……とされている)。とはいえ『アリス』や、かつてギリアムが撮った『バンデッドQ』(1981)のように子どもの空想が直接的に具現化されることはほとんどなく、あくまで現実世界におけるローズの姿と彼女が見たものを映している。だから余計に、たとえば類似作『パンズ・ラビリンス』(ギレルモ・デル・トロ監督、2006)よりも残酷で救いがない。それにローズを演じたジョデル・フェルランド──翌年『サイレントヒル』(クリストフ・ガンズ監督、2006)にも出てた──の声の演技も見事で臨場感があったゆえに、ラストに映る光景にけっこうな絶望感を覚えた。

『チョコレート・ガール バッド・アス!!』……ペット・ターイウォンカムラオ監督、ジージャー・ヤーニン主演。ジージャーのアクション凄い! 以上!──といえるのがせめてもの非常にゆるゥいタッチのコメディ映画。ターイウォンカラムオ監督は「タイのビートたけし」と呼ばれるコメディアンだけに基本的にはコメディ演出なのだが、それが実にベタでゆるいというか、ショットごとに小ネタをいちいち仕込んでくるオフ・ビートに過ぎる感じは、むしろ松本人志の撮る映画に通じるものがある気がするが、本作ではちょっとクドかった。ストーリもあっちへ行ったりこっちへ行ったりと忙しい。というのも現行、日本で見られるのは本国版『Jukkalan』からタイ人にしか通じないと判断されたコメディ部分などをカットして再編集したとされるヴァージョンのため──そこにストーリーに絡む部分も少なからずあったようだ──最終的にいったいどういうストーリーだったかの細かいつながりがよく判らぬままに映画が終わってしまって一抹の悲しさが残る。同監督主演でトニー・ジャーもちょっとだけ出演している『ダブルマックス』(2004)が気に入っていただけにちょっと残念だ。でも、ジージャーのアクションは相変わらず素晴らしいし、喜怒哀楽の表情がネコの目のようにくるく変わる彼女の演技は、ジャッキー・チェンのひとつの魅力に通ずるものがある。

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