2017年残りの雑記。

ちょこまかとtwitterにて書いていた備忘録(一部加筆修正)です。


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◆陸・海・空の3視点が交錯するダンケルククリストファー・ノーラン監督、2017)は、古くは『イントレランス』(D・W・グリフィス監督、1916)、最近では『クラウド アトラス』(ラナ・ウォシャウスキートム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー監督、2012)にあったような時空変形圧縮型の編集と凄まじい撮影の美しさで、まさに観客自身が戦争状態にあることを複眼的に楽しめる(怖がれる)戦争映画の新たな傑作。ハッとさせられるラストの音響演出にも注目。


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◆シリーズ最新作『エイリアン: コヴェナント』リドリー・スコット監督、2017)は、エイリアン×失楽園×ギリシア神話×北欧神話×創世記×新約聖書×シェリー夫妻×クラーク等々という様々なサブ・テクストとコンテクストが乱交する、諸星大二郎的四方山SF大作として超愉快だった。


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◆実話をベースにした猫映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(ロジャー・スポティスウッド監督、2016)は、いかにも感動ドラマ然とした大仰な演出を徹底的に廃した淡白でアッサリとした風味なのが実によかった。画面内のちょっとした変化が、押し付けがましくなく、じんわりと身に染みる。


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◆もはや実写としか思えない毛並と皮膚の質感と存在感に戦争映画史への愛をヤマと詰め込んで、現実世界への痛烈な風刺とオリジナル・シリーズからの小ネタをまぶしたシリーズ第3作猿の惑星: 聖戦記』マット・リーヴス監督、2017)は、シーザーの辿る旅路として、見事な大団円を迎えていた。


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◆劇場で見逃していたトリプルX: 再起動』D・J・カルーソー監督、2017)は、なんつうか、もうね、やったァ─────────ッ!!!! Fuuuuuuuuu ((((.˙∠)))) F*ckin' yeah!!!! みたいな、たのしいたのしいえいが。ドニー・イェントニー・ジャールビー・ローズなど人種性別を問わずワールド・ワイドに起用しつつ、正直に真っ向から「B」 a.k.a. バカ級アクション映画として振り切った実にマジメな造りで、ついでに世界の危機も救っちゃうとか、よくわからんが心は洗われるぞ。


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◆人気flashアニメ『秘密結社鷹の爪』シリーズの劇場版新作『DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』FROGMAN監督、2017)は、毒っけの効いたギャグが盛りだくさんで楽しい作品だった。安田顕が声をあてたジョーカーもよかったなぁ(力むと素が出るところも含めて)。


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◆ただひたすらブレードランナー 2049ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、2017)は美しかった……。嘆息。


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◆遠未来の地球を舞台にしたパワード・スーツもので、かつアニメでゴジラをやるというコンセプトはすごくいいGODZILLA 怪獣惑星静野孔文瀬下寛之監督、2017)だったが、その他諸々が雑過ぎやしまいか。音量や設定をデカくして、人気声優にキメ台詞を連発させとけばいいってもんじゃないよ。


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スティーブン・キング原作のホラーIT/イット “それ”が見えたら、終わり。アンディ・ムスキエティ監督、2017)は、劇中に映るポスターや看板が示すように、超凶悪なティム・バートン映画──そのほか、あの悪夢怪人が跋扈する作品など、舞台となる1980年代の映画がこっそり映っている──といった趣で面白い。なかでも、最初に画面に登場するポスターや印象的なロケーションから、とくに『ビートルジュース』(1988)を髣髴とさせる(きっとダニー・エルフマンのブンチャカと騒がしい音楽と差し替えても、ある意味イケるのではないか=暴論)。それにしても、ムスキエティ監督の演出は、じつに腰の据わっていて上品。瑞々しいジュブナイル要素と、計算しつくされた画と間で展開する恐怖シーンが見事にマッチした傑作だ。怖いよ。楽しいよ。


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功夫武侠スチームパンクでコミック調の『TAICHI/太極 ゼロ』『TAICHI/太極 ヒーロー』(共にスティーブン・フォン監督、2012)は、サモ・ハン・キンポー演出による殺陣、日本語吹替え版の遊び心、ヒロイン玉娘(ユーニャン)役のアンジェラベイビーの美しさが格別で、とってもキュートなり。


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オリエント急行殺人事件ケネス・ブラナー監督、2017)は、画作りや演出、施されたアレンジまで、まさに“いま”作られ、観られる作品として見事な再映画化だ。またラスト、ブラナー自身が作詞した本作の主題歌「Never Forget」(ミシェル・ファイファー)には、やられた。あんなん涙腺決壊するやろ。例によって字幕がない*1のが悔やまれる。


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哭声/コクソン(ナ・ホンジン監督、2016)は、これでもかとツイストにツイストを重ねて、あの『セブン』(デヴィッド・フィンチャー監督、1995)の文字どおり7倍以上の観念世界へ突入するあたり、奇妙奇天烈摩訶不思議奇想天外四捨五入出前迅速落書無用な趣でタハーッとなるので、マジ必見だ。


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スター・ウォーズ/最後のジェダイライアン・ジョンソン監督、2017)は、とにかく「よくやった!」ということに尽きる。ジョンソン監督の作家性が色濃い本作は、たしかに破戒的ではあるが、だからこそ「スター・ウォーズ」への原点回帰と同時に次世代への継承とが完全に果たされた、じつに解放的な一作となった。

*1:ので、なんとなく和訳してみた(検索しても出なかったし):  お家に、私のそばに帰ってらっしゃい。さあ笑って。「うん」と頷いて。一緒にダンスを踊りましょう。  とっておきのニコニコ顔をもって見せて。そして、優しく抱きしめてちょうだい。  お家に帰ってきてくれる? 私のもとに戻ってきてくれる? 愛しいあなた。  私たちは忘れない。私たちの心の中に、あなたはずっと生き続ける。だから安心して。  太陽がまぶしく照らす夏の毎日は、きっと一生の思い出。凍える冬を待つ暗い11月には、ぎゅっと私を抱きしめて。  ほしいものや願い事、将来の夢を、全部私に聞かせてくれる?   いつかお家に帰ってきたときに。私のもとに戻ってきたときに。愛しいあなた。  悲しいことがあったって、明日には忘れられる。困ったときには助けてあげる。愛と優しさを胸に、みんな、あなたを待ってるからね。私たちはずっと忘れない。お帰りなさい、愛しいあなた。