映画の感想を書くとき

学生時代からお世話になっている、とある先輩から次のような質問がありました。

まず、「映画の感想を書く時にどういうふうに(手順・気をつけてること等)書いてるのか」──そして、「何見ても『面白かった』しか言えない人間へのアドバイス」とのことでした(一部抜粋)。かつ、それをブログ投稿ないしツイートしてほしいとも。

じつに、むつかしいことを仰る。というのも僕は自身の客観視/客体化が大の苦手であるからです。映画の感想といったって、この弱小ブログに備忘録 *1のために書きなぐっているにすぎませんし、いっそのこと、モルモット吉田『映画評論・入門! 観る、書く、読む』(洋泉社、2017)を読んでください、と丸投げしたい(いい本です、絶版だけど)。

とはいえ、たまには自省もせねばなるまいということで、ちょっとまとめてみようかしらんと、キーボードを叩きはじめたのであります。したがって以下に連なる文章は、一般論でもなんでもなく、単に質問をくださった先輩への僕なりの回答です。そもそも僕は単なる素人映画好きにすぎません。書いてみたところで、きっと毒にも薬にも、なんら参考にもならないことでしょうから「コイツ暇なんか」と思って読み流してください。


     ○


まずは、「手順」というか、ここ数年間はこんな具合の内容の順番で書いている、というプロットですね *2。自分のなかで、こういう順序で文章を並べると書きやすいというのが──

1. 映画の簡単なあらすじ → ひと言感想(まとめ)をひと息に書く。


2. その作品のあらまし(どんなジャンルか、どこが観どころか、どんな映像か etc....)と、それについての所感。作品の周辺情報(作り手や役者、制作の経緯、インタビュー etc....)も、必要なら調べつつ書く。


3. 具体的によかった点、あるいは悪かった点を書く(演技、撮影、編集なんでもよい)。ネタバレするかどうかは、ときと場合による。


4. 〈3.〉 を受けてのより詳しい所感や、必要なら構造分析をおこなう。


5. あらためて簡潔にまとめる。


──といった具合です。実際に書く順序は “1.” を最後に書くか、あるいは最初に書いたものを最終的に調整することになります。各段落の文量(とその相対)は、そのときどきによって若干変わります。


     ○


次に「気をつけてること」ですが、これは端的に論理的であるように心がけています。それは、その映画についての説明を書くときでも、映画を観たことによって湧き出た感情を書き出すときでも同様にそうしているつもりです。

というのも、その作品についての僕の考えを、できるなら文章だけで伝えたいと思っているからです。それは、映画の感想を書かれる多くの方が、読み手のことを考えて作品ポスターや場面写真などをわかりやすいようにと添付しておられますが、僕は面倒くさがってやらないから……というショーモない理由もありますが、やはり好みなのでしょうね。映画は語ることで完成する、と押井守も言っています。

また、そうすることで誤謬を未然に防ぎたいというのもあります。このためには、多少は──ネットレベルでも──調べ物をしようかという気にもなれます。



それともうひとつ、作品の悪い点について指摘する際、決してそれを突いて終わりにするのではなく、ではどうすれば良くなるのか、という改良案を提示できるよう気をつけています。批判ではなく、できるかぎり批評でありたいからです。まあ、たまに──いや、けっこう割と?──匙を投げることもありますが……。


     ○


さて最後に「何見ても『面白かった』しか言えない人間へのアドバイス」との質問についてですが、このアクションがよかった、この役者が可愛かった、この物語転換にしびれた──など、どんなことでもよいので、ひとつ具体的にその作品について書き出してみてはいかがでしょうか。ふいに「やあ」と出会った友人に喋るようなイメージですね。1個なにか言おうとすれば、なんとなくでもそれを詳しく伝えられるようにと、2~3文くらい芋づる式に思いつくやもしれません。書いたり喋ったりしているうちに、ふいに言いたいことを思いついたり腑に落ちたりなんてことがよくあると内田樹が各所で語るように──映画の感想もやはり言葉ですから──あるのではないでしょうか。

また、参照できるものを思い起こすことも一助になるかもしれません。これはたとえば、前に観たあの映画──あるいは小説や神話、思想など──に似ている、同じ監督/役者だ、といった自分が知っていることでも良いと思いますし、または自分自身の内面に合致するもの──単純に好みから、かつての思い出や情感とか──でも良いと思います *3。ことほど左様に、切り口は多様にあるのではないでしょうか。


     ○


──といった具合に、先輩からの質問に対する僕なりの回答を、およそなんの脈絡もなく、上から下へとつらつら書き連ねてみました。これで回答になったなら幸いです。書けるわけねェや、と思っていましたが、存外文字数が増えてしまったことには「コイツ暇なんか」という疑念を拭いきれません。たぶん暇なのでしょう。


     ※

*1:しかも最近は、コンスタントに書けていないという体たらく! ごめんなさい。

*2:手順はもはや、映画を観る → 書く(or 書かない)に尽きます。

*3:往々にしてドハマリする作品というのは、観ている自分と映画世界とに共通項がありがちです。そして、こういった場合、作品のいわゆる “完成度” など蚊帳の外に吹っ飛んでゆきます。