2021 “年忘れ” ひとこと超短評集

みなさん、メリークリスマス。


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さて、ことし劇場で観たにも関わらず、とくにこれといった理由もなく、なんとなく書きそびれていた作品群リバイバル上映作は除く)の、ひとこと超短評集です。

年末の大掃除じゃい!


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『新感染半島 ファイナル・ステージ』ヨン・サンホ監督、2020)……前作とはガラっと雰囲気を変えたディストピアちょいジュヴナイル足し映画として基本的には楽しく、クライマックスのカーチェイスは見応え抜群。ただ、ラストの愁嘆場はいくらなんでも鈍重。


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『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』岩合光昭監督、2021)……人間が見たいと願うネコらしさを満喫する意味では、たいへんネコネコしい作品。T・S・エリオットが残したように「再度申し上げておくが、犬は犬、猫は猫だ」ってわけ(なに言ってんだ?)。


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名探偵コナン 緋色の不在証明』(2021)……新作に向けて、赤井秀一をはじめとする赤井ファミリーを紹介するためにTVアニメシリーズをリミックスした総集編モノだが、なんだか逆に判りづらく混乱する部分が多かった。付け焼刃だったか。


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レンブラントは誰の手に』(ウケ・ホーヘンダイク監督、2019)……レンブラントの絵画をはじめとした名画の売買取引の内幕を描くドキュメンタリー作品で、題材そのものは興味深いが、基本的に「はァ~ハイソ、ハイソ」な話ばかりなので「あっしは庶民だもンで」といささか食傷気味になった。


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『野球少女』(チェ・ユンテ監督、2019)……プロ野球選手を目指すヒロインを演じたイ・ジュヨンの佇まいと存在感がたいへん魅力的で、そんな彼女を全力でつぶそうとするかのような “システムそのもの” への懐疑を鋭くえぐる快作。


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『騙し絵の牙』(吉田大八監督、2020)……福助のような笑みを常に浮かべる大泉洋のなんとも知れぬ演技が役柄と合っており見事だし、いかにフィクションと人が関わって向き合うのかという部分が、やはり吉田監督作の味わいだ。


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『サンドラの小さな家』フィリダ・ロイド監督、2020)……冷淡な社会システムのなか、それでも人と人との繋がりによって拡がる協力関係の輪を描くあたたかさと、それを一瞬で破壊するマチズモへの絶望の深さとのギャップが、観客を鋭く突く。


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名探偵コナン 緋色の弾丸』(永岡智佳監督、2021)……コナン版「地底超特急西へ(ウルトラQ)」とでもいった乗り物パニックの後半が、まぁ派手なこと派手なこと。でもコナン君、そんなに観衆の注目を浴びつつ名推理を披露して大丈夫なのかしらん、といささか心配になった。


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ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督、2021)……自家用車に寝泊りしながら日雇い職を求めて全米中を移動する「現代のノマド」の実像を、じつに美しい映像と、フィクションながら登場人物のほとんどを “本人” 役で登場させる不思議なリアリティラインで描く。やはり『イージー★ライダー』を思い起こすけれど、ノマドとしての生活を神話的に美化しすぎなのは、ちょっと問題なのではという疑念もある。


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『ジェントルメン』ガイ・リッチー監督、2019)……洒脱な台詞まわしと時系列シャッフルを用いた初期のリッチー映画がお好きな方には間違いなくオススメ。じつにリッチーっぺえ味わいを楽しめる。


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ガールズ&パンツァー 最終章 第3話』水島努監督、2021)……ガルパンは7:3(個人比)くらいでいいぞ。対「知波単学園」戦の勝敗を決するロジックが面白い。


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『ザ・スイッチ』(クリストファー・B・ランドン監督、2020)……日陰者の女子高生と連続殺人鬼の魂が入れ替わることで巻き起こるテンヤワンヤが、適度なスリルとゴアとユーモアで描かれるたいへん楽しい青春殺人ラプソディ。物語は、いわゆる心のなかの天使と悪魔とが葛藤する説話構造だが、思い返せばちゃっかりヒロインが殺人鬼の人格を借りて日ごろの鬱憤をぜんぶ晴らしているのが可笑しい。観ながら、ふと『ヘザーズ/ベロニカの熱い日々』を思い出した。


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『ファーザー』(フローリアン・ゼレール監督、2020)……認知症を患うとはこんな感じなのだろうか、ということをまざまざと体感させられる作品。いま画面に映っているものも人物も、時間すらも歪み、ループし、反転する。その恐怖と孤独感。


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『ローズメイカー 奇跡のバラ』(ピエール・ピノー監督、2020)……ダメ人間たちのワンスアゲインを描く人情コメディ。さすがにフランス映画だけあって、中盤にある展開の倫理観のぶっ飛びかげんには笑っていいやらどうしていいやら。でも可愛らしい作品だったよ。


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クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(ジョン・クラシンスキー監督、2020)……前作が『大草原の小さな家』的な西部劇の構造を持ったモンスター・ホラーなら、本作はやはり同じく西部劇『勇気ある追跡』といった趣で、そのじつ現代アメリカの姿を鏡像のように炙り出す。壁を作るのではなく、対話によってこそ邪悪をくじく展開が胸を打つ。


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ピーターラビット2/バーナマスの誘惑』ウィル・グラック監督、2021)……前作同様、スラップスティックながら行き過ぎなバイオレンス描写が楽しい。


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『イン・ザ・ハイツ』ジョン・M・チュウ監督、2021)……移民2世ゆえに自身のホームを迷い求める主人公たち姿を映す。主人公たちの母親がわりであるアブエラが歌う彼女の歴史パートは必見。


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クレヨンしんちゃん 謎メキ! 花の天カス学園』(髙橋渉監督、2021)……クライマックスがまったくミステリと関係なかったのは残念だが、前半で丁寧に描写した学園のランドマークを余すことなく有機的に使い切った中盤の追走シーンの出来は格別。


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『とびだせ! ならせ! PUI PUI モルカー』(見里朝希監督、2021)……プイプイ!


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ワイルド・スピード/ジェットブレイク』ジャスティン・リン監督、2021)……相変わらずのカーチェイス大喜利が愉快で楽しい作品。とはいえドムたちが敵の技術を流用するのは反則じゃないかしらん。アナクロだからこそ勝てた、といった展開のほうが盛り上がったのでは?


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『スペース・プレイヤーズ』(マルコム・D・リー監督、2021)……まァお話の雑はともかく、実写とルーニー・テューンズが違和感なく混ざったヴィジュアルの奔放さが楽しいし、ローラ・バニーを演じた深水由美の吹替えがそれはもう素晴らしく魅力的で、うっかりケモナーの扉を開きそうになった(ナンダコレ)。それはそれてとしても、予告編で謳われた「映画のキャラクター大集合」が単にクライマックス試合の観客としてであって、その大半がメチャクチャ中途半端なコスプレだったのには笑いました。USJ のキャストか!


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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(デスティン・ダニエル・クレットン監督、2021)……香港カンフー映画×アメコミ映画といったケレンに溢れたアクションシーンがじつに素晴らしい。そしてトニー・レオンの色香よ! うっとりですよ!


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『モンタナの目撃者』テイラー・シェリダン監督、2021)……適度なコンパクトさで、じつにテレビの洋画劇場向き──木村奈保子さんの解説つきで「あなたの心には、なにが残りましたか?」と問いかけられるのがしっくりくるのじゃなかろうか──な作品。悪党コンビが醸す、ブラック企業勤めのサラリーマン感がなんとも知れぬ味わい。


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『サマーフィルムにのって』(松本壮史監督、2021)……自分たちの納得のいく時代劇を創意工夫のもと一生懸命に作り上げてゆく第2幕までは、たいへん可愛らしく爽やかな青春劇として大好物なのだけれど、クライマックスである上映会での展開でいっぺんに醒めてしまった。フラッシュモブへの過度な幻想というか、むしろここまでに彼女たちが作りあげた映画という作品に失礼なのじゃないかしらん。


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テーラー 人生の仕立て屋』(ソニア・リザ・ケンターマン監督、2020)……きほん無口な仕立て屋のオジサンが、持ち前の創意工夫精神を活かして移動式仕立て屋店舗──ようは屋台──を作ってゆく様子はノッポさんのよう。ここに関わる人間関係の機微や顛末がなんともアモーレの国の映画だなぁ、という味わいなのが面白い。


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『1秒先の彼女』(チェン・ユーシュン監督、2020)……どういうわけだか過ぎてしまったデートの日と、その日に撮られたらしい(が覚えのない)自身の写真をめぐるヒロインの探索旅行を独特な時間への解釈で描く、すこし不思議で可愛らしい作品。いうなれば梶尾真治が書くSF短篇と、『アメリ』を足したような味わいだ。


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『SEOBOK/ソボク』(イ・ヨンジュ監督、2021)……『AKIRA』か『童夢』かといったサイキック描写は迫力があったけれど、話運びはいささか鈍重でまどろこしかった。


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『クーリエ: 最高機密の運び屋』ドミニク・クック監督、2020)……普通のセールスマンをソ連からの機密を移送する運び屋として送り込むなんて、いやはやこんなことがあったのかと驚くことしきりの実録スパイもの。彼とソ連高官の内通者とのあいだに生まれる友情と仁義に涙する。


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『オールド』M・ナイト・シャマラン監督、2021)……人生の戯画化としての展開やヴィジュアルが、なんとも知れぬ邪悪なユーモアを含めて描写されるのが面白い。ていうか、シャマラン、出たがりもいよいよだな!


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死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(マイケル・チャベス監督、2021)……ようやっと公開されたパート3にして、これまでとは異なる変則的な作劇が面白い。ただ、予告編にあった、そして本編序盤で予感されたクライマックスの1ショット──洞窟のような閉所を進むロレインを後ろから映した姿が、背景もろとも螺旋状に奥に向かって無限にうねる──が、どういうわけだか本編から削除されていて「どうして?」となった。こここそ観たかったのに!


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『キャッシュトラック』ガイ・リッチー監督、2021)……ジェイソン・ステイサムまで登板してきて、いよいよ初期リッチーっぺえ作品。変則的とはいえ、“親の因果が子に報ゆ” なストーリーなので、「ステイサム、そりゃ自業自得だよ」と思わなくもないが、スコット・イーストウッドの狂犬じみた演技と、ホラー映画もかくやに顔見知りがバンバン死んでゆくラストが見もの。そして、本作の悪役たちの設定も、そのじつ現実ばなれしていないのが、もどかしというか、もの悲しいというか。


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『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』大森貴弘監督、2021)……コロコロと可愛かったけれど、前作と比べて脚本がぼんやりとバラけていてまとまりのない印象が強い。


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『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション京田知己監督、2021)……本作で描かれる物語のわりに、その主軸のひとつでもあろう「人の死」についての描写が弱いのが残念。また本作、場所やら施設やら時間やら、めったやたらと字幕スーパーが出るのだけれど、いくらなんでも画コンテのト書きにあるような文言まで字幕スーパー処理するのは、どうかしらん。


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『ツリーから離れて』(ナタリー・ヌリガット監督、2021)……アライグマの親子の姿を借りて、子育ての難しさと葛藤を親目線/子目線の双方を織り込んで描く短篇。内容それ自体も味わい深いけれど、驚くのがディズニー・アニメである本作がフル・アニメーションではなくリミテッド・アニメーションだったことだ(本作の映像自体は2Dアニメを模した3Dだと思うけれど、2コマとか3コマで動くんですよ)。


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『ミラベルと魔法だらけの家』バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ監督、2021)……いわゆるディズニー・プリンセス的なヒロインからの脱却という試みを、ひとりだけ持たざる者としての主人公をとおして描いており、まさしく野心作。家族や世襲制の明と暗部をもまざまざと炙り出すような展開も攻めている。もちろん、南米の風味をふんだんに活かした楽曲や画面の極彩色も素晴らしく、五感を震わすだろう。


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『パーフェクト・ケア』J・ブレイクソン監督、2020)……高齢者をターゲットにした一見合法的な詐欺的ビジネスを営むヒロインの底知れぬ存在感と手口が、共感こそしないが天晴れといった感じ。とってつけたような尻切れには納得ゆかない──逆のほうが、観客の世界の見え方が変わるような余韻がいっそうあったはずだ──けれど、すこぶる面白かった。


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『ヴェノム: レット・ゼア・ビー・カーネイジ』アンディ・サーキス監督、2021)……アクションの画が全体的に寄り気味で捉えづらかったのは残念だが、エディとヴェノムの夫婦漫才が目一杯楽しめたのでよし。それにしても、このシリーズのヴェノムこそ大泉洋が「人間食わせなさいよ、人間」と吹替えていたらなぁと思うのだけれど、いかが? *1


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『ラストナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト監督、2021)…… '60年代に憧れるヒロインの目を借りて描かれる、当時のロンドン──とくにショウビズ界における女性への性的搾取──の暗黒さ加減は、彼女同様にそこへの憧憬のあるというエドガー・ライトだからこそ真摯に描き出した衝撃と恐怖(顔のない男たちの幻影の恐ろしさよ!)をもってフィルムに定着されている。翻って今日(こんにち)はどうなのか、と問いかけるような苦味ある鑑賞後感も素晴らしい。

*1:もちのろん、カーネイジ役は “ふじやん” でよろしく。