2025年9月に、思い出したかのようにちょこまかとX/旧twitterにて書いていた短い短い映画感想の備忘録(一部加筆修正)です。
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【劇 場】
◆ドラゴンを害獣として退治するバイキングの島に暮らすひ弱な少年ヒックが、あるとき誰も見たことのない伝説のドラゴン “ナイト・フューリー” と出会う『ヒックとドラゴン』(ディーン・デュポア監督、2025)は、“実写化” という言葉が端的に似合うリメイク作だった。
本作は、クレシッダ・コーウェルによる児童小説を原作としたCGアニメーション映画『ヒックとドラゴン』(ディーン・デュポア、クリス・サンダース監督、2010)の実写リメイクである。しかも、もとのアニメ版の監督──のうちのひとりであるディーン・デュポア──自身がメガホンを取るという珍しい作品ということもあって、実写化に当たって大なり小なりの変更点はあるが、ヴィジュアル──ショットによっては、完コピなものもある──や再登板したジョンパ・パウエルによる音楽、設定と物語はほぼ忠実に踏襲されている。
そんな本作でとくに白眉なのは、なんといってもトゥースをはじめとしたドラゴンたちだろう。実写ベースにブラッシュ・アップされたVFXによって画面に息づく彼らたちの姿は、手を伸ばせば本当に触れられるのではないかと思うほどの存在感。そして、そんなドラゴンたちの背に乗って空を駆ける飛翔シーンの数々も──オリジナル版に負けず劣らずの──スピード感と臨場感、そして前述のVFX技術の進化によるリアルな──まるで「実写かよ」と見まがうばかり(矛盾をはらんだ表現)の、そして高低差表現はいわずもがな足がすくむような──没入感に溢れた素晴らしい出来となっている。もともとオリジナル版でも、撮影のアドバイザーに名匠ロジャー・ディーキンスを招聘して実写ベースの画作りを徹底していたが、これが巡り巡って本当に実写になってしまうのだから、なにが起こるかわからないものだ。
もちろん、気になった点も少々ある。今回のリメイクでは上映時間が30分ばかり延びており、このことによってオリジナル版の──いかに情報的にも情緒的にも的確に効率よく描くかを徹底して模索できるアニメならではの──テンポ感の良さが削がれているのは否めない。それ以外にも同様に、アニメーション作品と実写作品というなかなかに越えがたい溝が、本作で如実に感じられたのもたしかである。というのも本作では、残念ながらオリジナル版からオミットされたシーンやショットがいくつかあり、これらはどれもアニメーションのリアリティ・ラインだからこそ成立したギャグや動き──たとえば、トゥースの吐いた炎でヒックの髪がちょっとチリチリになる、というのは流石に実写化では浮いてしまうだろう──が含まれるシーンであるため、カットされたものと思われる。しかし同シーンには、物語の展開に必要なちょっとした布石──前述のシーンでいえば、ドラゴンたちの火炎放射の仕組みと、それを逆利用したラストへの布石 *1──も含まれているため、これらを補足するようなシーンを──あるいは1、2ショットでも──新たに追加してもよかったのではないかという疑念は拭いきれない *2。
とはいえ、マチズモ的な社会の同調圧力や暴力的な排外主義へのカウンターとして、対話と共生の道を観客に指し示してみせたオリジナル版から15年が経ったいまでも──いや、いまこそ──本作の掲げるテーマ性は有効であって然るべきではないだろうか。みなが右向けというから右を向くのでなく、周りとは違う視点から落ち着いて物事を捉え、自分だからこそできる創意工夫を凝らしてゆくヒックの姿にこうして再会できることは、きっと意義深いことだ。
その他、リアルなスケールになるとドラゴンってやっぱり巨大だなぁと感嘆したり、けっこう大掛かりなセットやプロップ、あるいはロケ撮影を用いていて画面が豊かだったり、ストイックを演じたジェラルド・バトラーがオリジナル版(声を担当)そのままでなるほどなぁと思ったり、「あんたニック・フロストだったンかい」と椅子からひっくり返ったり、そのじつ最強の見せ場「Test Drive」のシーンこそ──スコア含めて──完コピで観たかったなァと思ったり、なにはともあれラストに附されたロケ地(フェロー諸島)の空撮映像にほんのすこしだけ施された工夫 *3に感動したり……といろいろあるけれど、この壮大で心優しい冒険をいまいちど、あるいは新たにスクリーンで味わいたい1作だ。
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【ソフト】
◆ずっと観たい聴きたいと思っていた日本公開版音声の故ブルース・リー『死亡遊戯』(ロバート・クルーズ監督、1978)をようやっと鑑賞(遅い)。怪鳥音が──ストックとはいえ──本人のものに変わると、こうまで印象が変わるのかと驚嘆した。いかにしてすでに故人となったブルース・リーが、あたかも眼前にいるかのように見せるのかを苦心に苦心を重ねた撮影と編集も面白い本作だけれど、音声もやっぱり重要ですねえ。ホゥ/( ゚Д ゚)ノ アタ──ッ!
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*1:そして「君たちドラゴンのことを、僕らは誤解していたよ」というセリフも。
*2:あと──これは好みの問題かもしれないけれど──、全編をとおして画面が薄暗く感じられたことも若干気になった。映像はIMAX撮影された美麗で精緻な画であることはたしかなのだけれど、オリジナル版と比べるとコントラストの弱い画調であることと、あくまでリアルな光の表現に振っているためだろうか。あるいは本作をHDR(ハイ・ダイナミックレンジ)の環境下で観たなら、この印象は大きく変わるのかもしれないが、いかんせん地方シネコンの通常上映方式では、ちょっと惜しい画調ではあった。
*3:いくつかのショットに、空を飛ぶトゥースの影が地面に小さく映り込んでおり、そのなんとも知れぬ──SFX時代を思い起こさせる──「ほんとうにいる!」という感覚が嬉しかった。