2013年鑑賞映画作品/151-160 リスト

『47RONIN』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20131206/1386344878

かぐや姫の物語』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20131207/1386433296

『ジョニーは戦場へ行った』……ダルトン・トランボ監督・原作・脚本。第1次世界大戦に出征したジョーは戦場で被弾、意識が戻ると彼は自身が手も足もなく、目も耳も鼻も口すらもない状態にあることに気づく。これほど絶望的な状況を切り取った映画もそうない。ジョーにとって最大の不幸は、気が狂わないことだ。彼はそれ故に、自身のおかれた状況を正確に把握できてしまう。一方、夢に登場する思い出の中の、あるいはジョーの現状とリンクして登場する家族や知人たちとの問答が描かれ、より彼の悲壮感を増すことになる。そんななか、なんとか自分には意識があるということを伝えようと奮闘するジョーの姿に、そしてその結果訪れる結末には胸が張り裂けそうだった。トランボの実人生と重ね合わせてみても興味深い。必ず観ておきたい凄まじい1本だ。

『10人の泥棒たち』……チェ・ドンフン監督。「太陽の涙」と呼ばれる巨大ダイヤを盗むために集った10人の泥棒たちだったが、彼らには各々に裏の思惑があって──というケイパー映画。10人それぞれのキャラクターが立っていて、その一挙一動に付された粋な演出によってストレートに面白いが、やはりこの映画の見所は後半戦だ。それぞれの泥棒が互いを騙し騙されつつ展開するどんでん返しはもちろんのこと、クライマックスに描かれる高層マンションの壁面を使っての追走劇は、アクションのルックとして斬新だし、高所サスペンスとしてもとてもスリリングで手に汗握ること間違いなしだ。一部に反則ワザ的な伏線の回収があったり、メンバーの中に若干名その後の成り行きがおざなりなキャラクターがいたりと細々ツッコミ部分はあるが、非常に楽しいエンタテインメント作品だ。

ゼロ・グラビティ』……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20131215/1387101732

『ポゼッション』……オーレ・ボールネダル監督。妻と離婚し、週末ごとに2人の愛娘と過ごす中年男クライドは、とあるガレージセールで古い木箱を購入するが、それ以来、次女エミリーに異変が起こり始める──というタイトルどおりの“とり憑かれ”型ホラー。役者陣の演技は素晴らしかったが、なにかもう1歩突き抜けて欲しかったなァという物足りなさが残った。巻き起こる怪異現象もひとつひとつは怖いのだが、そもそも最初の1、2のものが映像的に派手なのもあって必要以上に淡々とした印象だ。実話ベースということもあるのかもしれないが、もうちょっと見せ方の構成に緩急のバランスがあればよかったのではないだろうか。

『原子怪獣現わる』……ユージン・ルーリー監督。レイ・ブラッドベリの短篇「霧笛」を原作に、レイ・ハリーハウゼンが怪獣リドザウルスをストップ・モーションで描いた、ゴジラガメラの御先祖様万々歳作品。本編部分は脚本に妙な粗があったり、キャラクターが総じて古典的な立ちんぼ演技なので、そのあたりはいま観ると若干たいくつだが、しかしなんといっても特撮パートで大活躍するリドザウルスの生物感が素晴らしい。スクリーン・プロセスの応用による実景との合成も見事だ。それにしても、いまや世界的に黒歴史となったアメリカ版『GODZILLA』(ローランド・エメリッヒ監督、1998)がやろうとしていたことは──もちろん第1作『ゴジラ』(本多猪四郎監督、1954)も本作の影響下にあるのは明らかだけれど──実は本作のリメイクだったのかもしれないなぁ。

ダイ・ハード/ラスト・デイ』……ジョン・ムーア監督、ブルース・ウィリス主演。世界一ツイてない男ジョン・マクレーン刑事が今度はモスクワでトラブルに巻き込まれるシリーズ第5作。敵のボスを屋上から突き落として(1)、思いもよらない裏切りがあって(2)、最後にヘリが墜落して(3)、なおかつ交通渋滞の中でドッカンドッカンやれば(4.0)、あら不思議『ダイ・ハード』に♪──なるとでも思ってるのか、イピカイエー! まぁシリーズらしさが万にひとつもないのは諦めて普通のアクション映画と割り切って観ようにもカメラは雑だし、脚本もあまりに雑。モスクワからチェルノブイリまで自動車でそんな短時間で行けるわけねーだろ! 「水曜どうでしょう」の企画か!

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』……アン・リー監督。インドからカナダへの渡航中に沈没事故に巻き込まれた少年パイは、ひとり救命ボートで太平洋に取り残されるが、そのボートにはオランウータン、ハイエナ、シマウマ、そしてベンガルトラも同船していた──という冒険映画。とにもかくにも映画館で観たかったなァ悔しいなァ(地団駄)と何度も嘆息したほどの映像美が凄まじい。CGで精緻に作り込まれたリアルだがありえそうもない幻想的な風景が満載だ。そして、このまさに絵に描いたような映像によって秀でた見世物映画として留まらるどころか、それがこれらの映像がきちんと物語的、映画的な“仕掛け”として機能しているところが素晴らしい。映画を最後まで観ると、本作全体がじつに巧妙に組まれた物語論あるいはフィクション論であり、そして「人生とは」という問いをわれわれに投げかけていることが「なるほど、そういうことだったのか」とわかるだろう。素晴らしい作品だった。それにしても映画館で観たかったなぁ!

クラウドアトラス』……ラナ・ウォシャウスキートム・ティクバ、アンディ・ウォシャウスキー共同監督。デイヴィッド・ミッチェルの長編小説『クラウド・アトラス』を原作に、19世紀から文明崩壊後の未来までの6つの異なる時代の物語を同時並行で描く大作。生まれる時代や場所、人種や性別も異なるものの魂としては存続していくという、いわゆる業(カルマ)や輪廻転生を題材とした作品で、手塚治虫の漫画『火の鳥』シリーズのような壮大なもので、よくもこんな映画をハリウッドで作り上げ、なおかつ間口の広いエンタテインメントとして成立させたものだと、まずはそこに驚く。アクションや感情面、物語の展開によってシームレスに並列される6時代の繋ぎ方も非常におもしろく、この巧みな編集も相まって、映画それ自体に難解さが欠片もなく仕上げた手腕に脱帽。まったく世界観の違う物語それぞれの映像も非常に豊かだし、その主人公たちを繋ぐのが手紙や小説、音楽などの創作物や芸術作品という点もまた感動的だ。
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