『ラスト・ブラッド』『バビロンA.D.』

  • ラスト・ブラッドプロダクションI.G製作/北久保弘之監督による中篇アニメーション作品『Blood The Last Bampire』の実写リメイク作品。正直、あんまり期待していなかったのだが、意外や意外、かなり秀作であった。ベトナム戦争時下の日本という原作の世界観を丁寧に描出しており、ちゃんしたと日本語が書いてある/日本語が聞こえるれっきとした日本──もちろん架空ではあるけれど、ちゃんと日本的な世界観を保持した──である。日本語と英語が混在するその世界を見事に描いている(脚本に、オリジナル版でも脚本を担当した神山健治が参加しているらしいので、その影響だろう)。群がるヴァンパイアたちを日本刀を携えた少女が斬り倒すモンスター・アクションとしてもなかなかよくできており、スピーディな剣戟アクションが楽しめる(ポスプロも自然)。難をいえば、クライマックスのアクション・シーンがイマイチ盛り上がりに欠けるというか、尺/ボリューム不足な点。主人公・サヤの宿敵・オニゲンを演じた小雪のスケジュールの関係上なのかどうかはさておき、クライマックスにもっと力があれば、さらに見応えのある作品になっただろう。
  • 『バビロンA.D.』…『ピッチ・ブラック』等のヴィン・ディーゼル主演のSFアクション……だったのか? 前半こそ、傭兵・トーマックと謎の少女・オーロラ、そしてその保護者であるシスター・レベッカヨーロッパ大陸からアメリカへの脱出劇が描かれており、荒廃した近未来という世界を遺憾なく描いていたのだが、中途からまるでホーム・ドラマのようなテイストに妙な具合にシフトしていってしまう。そもそも映画のスタートが謎の爆発に巻き込まれたらしいトーマックがそれまでの経緯を振り返るという構成になっており、その《フラッシュバック》を尺の実に8割強かけて描くのである(その後、この壮大な前フリのネタバラしがやってくる)。それはそうとしても、それまでにかなりアクションに尺の多くをさいてきた映画であるから、クライマックスにもう一発、ドでかいアクションを期待してしまうのが人情というもの。しかし、鑑賞しつつDVDプレーヤの時間表示からイヤな予感はしていたのだが、それが一切/まったくないのだ。不完全燃焼といおうか、なんといおうか、非常に残念な作品だった*1。何故にバビロンなのか、それもイマイチわかりづらいし。ただ、前半に登場する「紙地図」──この小道具のギミックはおもしろかった。

*1:調べてみると、なにやら制作上・権利上のいざこざがあったのか、監督自身が本作を批判しているらしい。