【備忘録】映画の好きな悪役10選(順不同)

ちょっとばかし前、大学時代からお世話になっているとある先輩から「そういえば、君の好きな映画の悪役って誰なのか」とふいに尋ねれられたことがありました。

そういった観点でものを考えたことがなかったので、そのときはなんとなく咄嗟に思い出される悪役──ということは、印象に残っており、好きな悪役と言っても間違いではないなと思ったからです──を挙げてそのときの返答としました。そこで、それから今一度記憶をひっくり返し、改めて自分の好きな悪役は誰なのか──そして、その理由──を考えて、なんとなく10人くらい挙げて個人的な忘備録としようと思って、いまキーを叩いてる次第です。怪獣、怪人、怪物はノー・カウントです。


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エンジェル(『続・夕陽のガンマン』より、リー・ヴァン・クリーフ演)……テュコとブロンディの金塊探しの旅に付かず離れずつきまとう「悪いヤツ」の悪魔性に、演じるクリーフのトレードマークともいうべき頬骨ばった輪郭に切れ長なツリ目と鉤鼻、そして全身全霊「悪」の権化たる立ち振る舞いがマッチして最凶だ。吹き替え版では「ハゲタカ」と呼ばれる彼だが、クリーフのフィックス故・納谷悟郎の声が加算されて、さらに最高となる。


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パルパティーン(『スター・ウォーズ』シリーズより、イアン・マクダーミド演)……いわずと知れた銀河帝国皇帝陛下。とくにプリクエル(『エピソード1~3』)において、彼が権力を集積し構築し独占する政治力と策略は、いまもって現実的──かつ現在進行形──なのが恐ろしいこと極まりない。ただ、度重なるルーカスの改稿によって『帝国の逆襲』初登場時(エレン・ベイカー演、クライヴ・レヴィル声)の『オズの魔法使』感がなかったことにされているのが残念だ。


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イリーナ・スパルコ(『インディ・ジョーンズクリスタルスカルの王国』より、ケイト・ブランシェット演)……部隊を率いてインディたちと激烈な死闘を繰り広げるサイキックKGBエージェント、という冷戦時代の悪役感増し増しな設定に加えて、あのブランシェットに黒髪オカッパ頭に軍服を着せるというなんとも知れぬ可愛らしさ、そして実写映画としては右に出る者のない見事な「ぐぬぬ……」顔は、映画史に刻まれるべき。


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ガゼル(『キングスマン』より、ソフィア・ブテラ演)……切れ味鋭い両足義足の殺傷能力の設定過剰さに、もともとダンサーだったブテラの軽やかな体躯と身体能力の高さによる説得力が組み合わさったことで醸される絶妙な存在感が素晴らしい。そしてメイドさんとしてもじつに優秀なのがとっても素敵ですよ。オイラもビッグマックセットを配膳されたい。


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ベニー・ガーバー(『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』より、ケヴィン・J・オコナー演)……本作におけるラスボスはもちろん復活ミイラ男イムホテップなのだけれど、ひょんなことから彼の従者となるベニーの小悪党感がたまらない。それも、単にいけ好かないバカ男なのではなく、英語ペラペラなうえ古代エジプト語にも通じ、歴史にもそれなりに詳しいという重層的な人物像が、彼独特の憎めない雰囲気を醸している。そういった部分をつぶさに描出したオコナーの演技が凄く良くてね……。


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ハンス・グルーバー(『ダイ・ハード』より、アラン・リックマン演)……知的な風貌に紳士的なふるまいと、いっけん柔和な穏健派に見えるけれど、同時に目的のためなら手段を選ばぬ冷酷非道ぶりを見せつけるギャップが、彼のキャラクターをより悪魔的に恐ろしくしている。ドイツ出身という設定もあってかどうか、一瞬挿し挟まれるドイツ表現主義的なショットもじつに効果的。そして、あの最期の表情は──演じたリックマンには少々気の毒だが──映画史に刻まれるに値するものだ。


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スコルピオ(『ダーティハリー』より、アンディ・ロビンソン演)……天使のような顔をしていることを条件にロビンソンをキャスティングしたと云われるが、それゆえに自身の殺人や暴力の衝動を女性や有色人種、果ては年端もゆかない子供といった自分よりも弱い相手にだけ向ける彼の猟奇性や異常性の卑劣漢な醜悪さが際立つ。「漕げ、漕げ、漕げよ、もっと漕げよ。ランランランラン、川下り~♪」と童謡を熱唱するシーンの恐ろしさよ!


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ノーマン・スタンスフィールド(『レオン』より、ゲイリー・オールドマン演)……常にダウナー系のヤクでキマっているスタンスフィールドを見事に体現してしまったオールドマンの演技の凄まじさには、いつ観ても圧倒される。ヤクを呑み込んだあと身体を捻じりながら出すなんとも知れぬあの声は、どうやって出しているのだろうか。あと、暖簾を両手でファサーッと軽やかに開いてくぐる動作は、みんな1度は真似したんじゃないかしらん(僕もやりました)。


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ロウ・サン(『プロジェクトA』より、ディック・ウェイ演)……海賊王といったら、なんといっても彼でしょう(異論は是認)。なんてったってジャッキー・チェンサモ・ハン・キンポーとユン・ピョウがよってたかって闘って、ようやっと倒せるほど強いンですよ。これほどの説得力があるだろうか。ゴジラでいえばキングギドラだ。あと、孤島の洞窟に建設した秘密基地にある玉座の間をわざわざ船底を思わせる意匠にしているところも、インテリアに凝る悪党として5億点ですよ。


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なんやかやで、その悪役が好きなのか、その作品が好きなのかがゴッチャになっている感は拭えませんが、映画が面白くなければ悪役は映えませんし、反対に悪役の映え方が映画の魅力に直結している場合もあるので、それはそういったものでありましょう。それにしても、我ながらなんともボンクラなリストになってしまいました。人間性とは隠せないものですね。