今年になって劇場で観たにもかかわらず、とくにこれといった理由もなく書きそびれていた作品群の、ひとこと超短評集【Part 2】です。備忘録、備忘録。
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◆世界初のファンタジー・テーブルトークRPGを改めて映画化した『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(ジョナサン・ゴールドスタイン、ジョン・フランシス・デイリー監督、2023)は、おそらく画面外で本当にロールプレイをしている人物たちがいるのだろうなと思わせる、キャラクターのきっちりとした役割分担感が面白いし、アクションもギャグも特撮もよい按配で画面を盛り上げる。
贅沢をいえば、もうすこしドラゴン要素があれば──以前の映画化『ダンジョン&ドラゴン』(コートニー・ソロモン監督、2000)のクライマックスまでとはいわないけれど──怪獣好きとしては嬉しかった。それにしても、ここのところヒュー・グラントは本当にこういう飄々とした悪役が板についてきましたね。
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◆原因不明の多次元宇宙交錯現象によって、町に怪獣がふたたび現れる『グリッドマン ユニバース』(雨宮哲監督、2023)は、本作に連なるテレビ・シリーズ『SSSS.GRIDMAN』(同監督、2018)と『SSSS.DYNAZENON』(同監督、2021)の物語内で積み残された、あるいは果たしてこれでよかったのかという疑問点などに作り手が自らきちんと落とし前をつけようと模索された、誠実な続篇/劇場版だった。
本シリーズの世界観設定を活かした、次元の交錯するストーリー構成は──尺的に物足りなさはあるけれど──興味深かったし、グリッドマンと怪獣の特撮とロボット・アニメを合体させた大立ち回りは迫力満点だ。ただ、クライマックスの戦闘シーンでの主題歌3連発は、定番の演出とはいえ、ちょいとカロリーが高すぎて息切れした。
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◆ 1984年、ナイキのバスケットシューズ「エア・ジョーダン」誕生に導いたソニー・バッカロたちの奮闘を描く『AIR/エアー』(ベン・アフレック監督、2023)は、いかに競合する他社を押しのけてマイケル・ジョーダンと彼の母にライセンス契約を結ばせるのか、という会話劇の積み重ねがたいへん楽しめる1作だ。姿は丸くなったが相変わらずのトークを放つクリス・タッカーをはじめ、キャスティングの妙も冴える。また、全篇に渡るちょっと青味かかった色彩設定が、まさしく ’80年代映画の──テレビやVHSでくさるほど観た──タッチで、作中の時代感ともピッタリだ。
惜しむらくは、じつは映画では描かれなかった、ソニー・バッカロの「その後」をキャプション分での大オチに持ってくれば、よりトンがった伝記映画となったのではなかろうか。
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◆瀕死のロケットを救うため、クィルたちガーディアンズが立ち上がる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: VOLUME3』(ジェームズ・ガン監督、2023)は、製作過程で紆余曲折あった本シリーズにおいて、きちんと大団円を果たしてくれた1作だった。じつは本シリーズにおける真のヒーローは誰だったのかが詳らかにされる展開や、終盤にある1カット長回しふうアクションのケレンと迫力、キャラクター同士の相関が垣間見られるちょっとした演出の機微など素晴らしく、本作ほどラストでの「打ち上げ」シーンでスクリーンのなかのキャラクターたちと一緒に踊りたくなる映画もなかなかないだろう。ありがとう、ガーディアンズ!
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◆ドミニクたち「ファミリー」の前に、最強の敵ダンテ・レイエスが現れる『ワイルド・スピード/ファイヤー・ブースト』(ルイ・レテリエ監督、2023)は、相変わらずドッタンバッタン大騒ぎなカー・アクション大喜利が全篇に渡って繰り広げられる楽しい1作だ。もはや近作のお家芸ともなったサクサク後乗せ設定も山盛りとなり、メイン・キャラクターの生死に一切の緊張感が伴わないのは御愛嬌として、本作と次回作(以降)のヴィランとして登場したダンテ・レイエスは、ジェイソン・モモアの快演も相まって、なんとも知れぬサイコパスな存在感を放っていて素晴らしい。
次回作の布石として二重三重に敷かれる「なんとアイツが⁉」には驚愕し大笑いしつつも、「じゃあ、オイラが流した涙はなんだったのか」となる一幕もあったのでした。とにかく、もう1作延ばすとか言ってないで、さっさと作って終わろう!
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◆死別した母を救おうと、バリーが過去で歴史を改変をしたために世界がズレはじめる『ザ・フラッシュ』(アンディ・ムスキエティ監督、2023)は、戦闘シーンでの超スローモションや、いままで観たこともないような曼陀羅もかくやのヴィジュアルが圧巻なタイムトラベル・シーンなど、映像的に見応えのあるシーンが満載の1作だ。主人公バリー・アレンの2ヴァージョンをひとり二役で演じたエズラ・ミラーの別人なのだけどギリギリ別人じゃない感を自然に醸した演技も──製作中にいろいろヤラカシをしていて若干モヤモヤするけれど──素晴らしい。そして、なかでも本作でスーパー・ガールに大抜擢されたサッシャ・カジェの、新鮮ながら1発で観客を納得させる見事な存在感は本作の白眉だろう。ぜひ彼女主演で『スーパーガール』をシリーズ化してほしい。
それにしても、本作のムスキエティといい、これまでのDCは本当にホラー映画出身監督の使い方が巧かったわけだけれど、今後のジャームズ・ガン新体制でどう変化してゆくのだろうか。
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