『マックス・ペイン』『グラン・トリノ』

  • マックス・ペイン…愛する妻子を殺され復讐の鬼と化した刑事マックス・ペインが、単身犯人とその裏に秘められた陰謀を追うアクション。スローモーション撮影を随所に交えたガン・アクションや、劇中登場する麻薬“ヴァルキリー”の幻覚など、画面構成にセンスは感じられるが、脚本があまりにお粗末。脚本の緩急とアクションの絡みが巧くいっていないように思われるし、何より、なんと尻切れかつ後味の悪い──悪いのはいいのだが、なんとも薄味な感じで──エンディングなことか! エンド・クレジットのテンションとの差を考えると、いまいちコンセプトと映画とで微妙なずれが生じてしまったようだ。
  • グラン・トリノクリント・イーストウッド監督・主演。世を嘆く孤独で頑固な老人ウォルトが、隣人のアジア系移民家族の姉弟スーとタオと交流を深めていくヒューマン・ドラマ。ウォルトの眼を通して描かれる荒んだ世間、そしてその中で育まれる彼と隣人の少年タオとの不思議な師弟関係や友情など、ペーソスながらも微笑ましく描かれる空気感が素晴らしい。これはもしかしたら、イーストウッドが現代アメリカに蘇らせた西部劇だったのかもしれない。静謐だが、しかし心熱くなる傑作。必見。