『神様のパズル』

双子の弟・喜一が突然海外旅行に行ってしまい、代わりに素粒子物理学のゼミに出席した基一。代返するだけのつもりが、担当教授から不登校のホミズサラカをゼミに連れてくるという難題を課せられてしまう。あまりの天才ゆえに学校にも興味が持てず孤独に生きるサラカ。勝算もないまま彼女のもとを訪れた基一だったが、難しい話をするサラカの前で彼がふと口走った“宇宙をつくることはできるのか?”というあまりにも壮大で素朴な疑問が彼女の心を捉えてしまう。翌日、ゼミに現われたサラカは、基一を従えて“宇宙創生”を立証するための研究に乗り出すが…

機本伸司の同名原作小説を、三池崇志監督で映画化。

本作の原作である『神様のパズル』の小説版は未読だが、機本伸司の著書として『僕たちの終末』と『スペースプロ−ブ』は以前に読んだ。実は、両方とも小生はあまり好きではない。というのも、一冊の長編の中に幾度となく繰り返される内容の同じ問答や、殊にその物語のオトシ方にたいそう唖然とし、閉口しようにも開いた口が閉じられなかった記憶がある。その著者の原作にして監督が三池崇志である(この人の映画は本当にどちらに転ぶか皆目見当がつかない)。……ということで、観る前から実はかなり主観的ながらも不安要素はあった。

で、その悪い予感は結果的に当たってしまった、というのが結論。

確かに中盤まではそれなりに楽しめはした。地方都市の田園部に鎮座する巨大な実験装置“むげん”の造形や宇宙の作り方、あるいはその創生に関する解説やアイディアはなかなかのものだと思う(画面に時折り現れるyoutube的なギャグは少々やりすぎだと思うが)。しかしクライマックス、当初から物語の根幹を成していた「果たして宇宙を人工的に創生することが出来るのか」という要素は、いきなりなりふり構わず台風の暴風とともに大きくシフトしてしまい「やっぱりか!」と叫んでしまう始末、知りたい物語の結末は(そちらも確かに大事だが)そんなことじゃない、と。正直なところ、それ以前に人物相関に関する描写がかなり薄いので、ときどき不可解な場面が登場してしまうのがこの映画の一番の難点だろう。

しかし、劇中に数人のお笑い芸人が出演しているが、その画面内での〈自然さ〉は特筆すべき良い出来だった。


詳細『神様のパズル』
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=330007#1