『女必殺拳』『バベル』など

  • -映画『ディー・ウォーズ(D-WARS)』…“D”はドラゴンのD。でもそんなにドラゴンは出てこない、ほとんどコブラ。結局のところ『ロード・オブ・ザ・リング』やりたかったのか『スター・ウォーズ』やりたかったのか『ドラゴン・ハート』やりたかったのか『ゴジラ』やりたかったのか、それとも『グリーン・ディスティニー』やりたかったのか、はたまた『トランスフォーマー』やりたかったのか(でも音楽はスティーブ・シャブロンスキーで本人)よくわからん五目寿司状態でさっぱりだったが、薄情なまでの主人公の行動と、過剰なまでの音響効果はめちゃんこ気持ちイイぜ。

  • -映画『50回目のファースト・キスアダム・サンドラーは下世話なギャグも素朴に楽しくなるから不思議な俳優だと思う。水族館に勤める獣医の設定から動物たち(ペンギンにセイウチ、イルカ)も健闘して観る側をなごませてくれる。ドリュー・バリュモアが見るうちにどんどん可愛らしく見えてくる脚本と演出が見事。

  • -映画『僕の彼女はサイボーグ』綾瀬はるかの“綾”は綾波レイの“綾”みたいな映画。少々過剰な演出と、どこまでも主人公至上主義な展開がところどころ空まわりしている箇所もあるけれど、それもひっくるめて『2001年宇宙の旅』から『ターミネーター』などなど様々なSF映画のエッセンスを凝縮した〈SF少年への讃歌〉。

  • -映画『バベル』…誤解、すれ違いを繰り返す人々の姿をワールドワイドに交錯し、時間軸さえも入れ違う構成でもって描く。何かを読み込もうとするけれど、結局、すべてはタイトルに集約されている。それを含めてきわめて冷静でソリッドな傑作。

  • -映画『1408号室』スティーヴン・キングの同名短篇を、キングがこれまで描いてきた〈恐怖〉の断片をこれでもかとふんだんに盛り込んで長編映画化したもの。不条理な部屋、食い違う台詞と人間関係、シンメトリックなカメラワーク、短いカット繋ぎを用いた硬質でソリッドな編集……どう見てもキング、キング映画。終盤その熱気にうかされるてか、急ぎ足に過ぎるのは許してやれ。カーペンターズのヒット曲のひとつ『愛のプレリュード(We've only just began)』の使い方が素晴らしいぜ。
  • -映画『ショーン・オブ・ザ・デッド…ロメロ監督『ゾンビ』を筆頭に、ゾンビ映画へのオマージュとパロディと、そしてゾンビ映画の本質・人間風刺までを巧みに組み込んだブラック・コメディ。恣意的な台詞やカメラまわしの絶妙な繰り返しの妙、シュールなブリティッシュ・ギャグなど、全部ひっくるめてコイツは凄え大傑作だ。人間一度は死ぬもんだ! そもそも既に死んでいる!

  • -映画『恋しくて』…脚本とキャスティングの勝利。冴えない主人公キースにエリック・ストルツ(マーク・ハミル似だ)、学校の憧れの的アマンダにリー・トンプソン(綺麗だねやっぱり)、キースを密かに想う負けん気な幼馴染ワッツにメアリー・S・マスターソン(いまでいう僕っ娘)という配役が、堅実でシンプルな脚本と相まって見事。ただ、終盤早足に過ぎるきらいがあるので、15分くらい尺をとってストーリィの〈締め〉をやってくれてもよかったかもしれない。