『乙女の祈り』など

  • 乙女の祈り…1954年にニュージーランドで実際に起きた、アン・ペリーによる実際の殺人事件を題材にした、『さまよう魂たち』や『ロード・オブ・ザ・リング』3部作などのピーター・ジャクソン監督・脚本作品。事件のドキュメントというよりも、主人公のふたりの少女の友情や多感さ──自分たちで創りあげた小説/架空の世界に生きる──、それに対する周囲の動向に焦点を当てている。非常に純粋であるが故に、非情なまでに残虐な結末(その様子は実に生々しく、肉感的に痛々しい)を迎えてしまう彼女たちの青春を、当時最先端であったろうVFXも随所に用いながら、活き活きと描いた秀作。『ロード〜』で見られた俯瞰ロングでかつぐるりとキャラクタを周回するカメラワークも健在。
  • シモーヌ…『ガタカ』を監督し、『トゥルーマン・ショー』では脚本を担当したアンドリュー・ニコル作品。アル・パチーノ扮する落ちぶれた映画監督が、自在に操れるCGアクトレス“シモーヌ”を手に入れたことで起こる騒動をコメディ・タッチに描くSF映画。前2作同様、SF的なシチュエーション設定がとかく秀逸。ある“発明”が自分の手を離れてどんどん膨張・暴走してゆく様は実にコミカルで、どこか疲れきった表情で始終画面に登場するアル・パチーノと相まっていて、素晴らしい。この映画を観ていて、昨今の“ヴォーカロイド”ブームを思い起こしたのは小生だけだろうか?
  • デイ・オブ・ザ・デッド…ロメロ『死霊のえじき』のリメイク作品。もうゾンビが走るわ、跳ねるわ、天井を這うわとすんげえ元気なら、生き残った人間たちも負けず劣らず元気元気。戦うヒロイン(ミーナ・スヴァーリ)を筆頭に、とにかく奮闘するキャラクタたちを見ていると──ヘンな話だが──こっちも元気になってくる。人物設定や脚本における伏線なども実によく作り込まれており、それらが絶妙なエッセンスとなって、観客を飽きさせない。サバイバル・アクションとして、かなりの傑作だと思う。