『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』

ガイ・リッチー監督が描く21世紀型ホームズ映画第2弾。ヨーロッパ各地で謎の爆破事件が頻発する。事件の数々を単身調査をするホームズは、ある人物にたどり着いていた。それは、もうひとりの天才・モリアーティ教授だった。一方、ワトソンはといえば、結婚式を迎え、新妻とともに新婚旅行に旅立とうとしていた。

待ってましたの第2弾ということで、結論から申せばたいへん楽しく観られた作品だった。リッチー節のケレン味溢れるアクションあり、ルパン三世よろしく変装しまくるホームズあり、申し訳程度に推理もあり、もちろんご存知“あの”ホームズ&ワトソンのコンビが付かず離れずきゃっきゃうふふ──ブロマンス bromance って呼ぶんだそうで。ホームズの純情っぷりを演じきったダウニーJr.が最高──をこれでもかと繰り広げてくれるのだから、楽しくないはずはないのである。

武道から銃撃戦からチェイスシーンまでさまざま用意されている今作のアクションのなかでは、やはり後半の森林での追走シーンが1番楽しかった。逃げるホームズたちを無数の銃弾が、まわりの木々を粉砕しながら飛び交う様子をスーパースローモーションで捉えてゆく映像は、『マトリックス』(1999)中の、ビルのホールでの銃撃戦シーンに感動したかつての興奮を思い出させてくれる(舞う瓦礫の美しさよ!)。ただ前作と、今回ちょっと全体的にアクションが観づらくなっているような気もするのが残念(シネスコのくせに寄りのショットが多かったからか)。

この映画において、ホームズが天性の天才であるなら、モリアーティは知性の天才とでもいうことになるのだろうか。モリアーティを演じたジャレッド・ハリスの佇まい、その風貌がすばらしい。どこかやはりカリスマ性のようなものを感じさせるダウニーJr.と並んだときのハリスの、むしろその普通さ加減が、見事にキャラクターの性質の決定的な違いを醸しだしていて、的確なキャスティングだ。

ただ、今回のスケール・アップに伴ってか、脚本上でもさまざまな要素が盛りだくさんであって、少々詰め込みすぎな感──というか、不完全燃焼感が残念ではあった(回収されていない布石がちょっと多い)。

ともあれ、ラストに堂々と「?」を提示した以上、次回作が製作されること、またきっちりと話の落とし前をつけてくれることを楽しみにしたい。